智の木協会活動報告

智の木協会の活動報告ブログです

第12回グリーンツーリズム 「大山崎の“聴竹居”見学会」レポート

 昨年(平成29年)、大山崎に「聴竹居」という歴史的にも建築学的にも非常に意味のある建物があるので、ぜひ見学会をとの助言を得、会員の皆様に呼びかけて4月15日(日)に実施しました。

 当日の朝は雨でしたが、見学時間の午後になりますとすっかり止みました。新緑の素晴らしい季節、参加者の皆さんは集合時間よりも早くに現地に赴かれ、周辺を散策されていました。

 「聴竹居」は、大正から昭和にかけて活躍した建築家、藤井厚二氏(京都帝国大学工学部建築学科教授を歴任)が、環境工学を意識して設計し、「真に日本の気候・風土に合い、日本人の身体に適した住宅」を目指して自邸として建てられたものです。実験住宅として建てるにつき、大山崎の地に1万2千坪の土地を買い求め、実験すること4回、現存する聴竹居は実に5回目の住宅だそうです。現在は(一社)聴竹居倶楽部が管理運営されており、私どもは倶楽部の事務局長、田邊均様にご案内いただきました。

























 まず外観からの庭で目に付いたのは若葉が芽吹いた黄緑色のモミジで、ちょうど、縁側のみどりのカーテン役になっており、夏の強い日差しを遮る役目もしているそうです。秋には周辺のドウダンツツジアセビと共に鮮やかな色彩に彩られ、やがて太陽の日差しが欲しい頃には辺りはモミジの絨毯と変貌します。植物は意図的に植えられているのです。南面は、現在こそ治水工事と堤の桜が大きく育ったため、展望できませんが、三川(木津川、宇治川桂川)が合流して淀川となる地点でもありますので、藤井氏がこの場所を決めた際には眼下に雄大な風景が広がっていたようです。

 いよいよ室内の案内です。最初に通された部屋が居室、リビングルームです。全ての部屋がリビングに面していて、床は現代風のフローリング、正面には一段あがって(30 cm)畳の間(小上がり)があり、見学者はそこに腰かけて説明を聞くことになりました。畳の間への段差は椅子の役割も担っており、椅子と畳を共存させた和風モダン住宅です。


























 田邊様から「築90年、基本的にはどこも修理していません」と説明があり、阪神大震災もありましたのにとにわかには信じられませんでした。藤井氏は部屋に家具を並べることを避け、コーナーに造りつけました。それらは家具兼火打ちで、建物の強度を増す役割をしているそうです。仏壇や神棚などは全て収納タイプでした。夏の蒸し暑さ対策に注力した試み、着想の素晴らしさを汲み取ることができました。その1として、畳の間の下に室内に西風の取り込み口を設置し、地中で冷やされた土管を通り抜けることで暑い空気を冷やす自然の冷却効果を狙った工夫が見受けられました。


























 その2として、「名塩和紙」を使用した和紙天井でした。和紙は、空気が通り湿気も吸い取ります。また縁側は網代天井で、自然に空気が循環します。照明にも工夫が凝らされ、反射板を最大限に利用して下だけではなく横も照らしていました。

 室内は直線と丸、幾何学模様等を取り入れたデザインで、藤井氏はスコットランドの家具のデザインでも有名な建築家のマッキントッシュの影響を受けていたそうです。

 縁側は柱が見当たらない構造ですが、未だに水平が保たれているそうです。90年間歪むことなく建っている理由は、窓枠が柱の役割を担っていること、コーナーに造り付けの花台兼火打ちで補強してあるということでした。窓ガラスも一度も交換されておらず、窓枠など、隙間風が入ったりするものですが、全く狂いがありませんとのこと。縁側に夏は日差しを避けたい、冬は中に入れたいという矛盾した考えを両立させるために桔木(はねぎ)で支え屋根の軒先の出を調節してありました。ガラスは上部がすりガラスで無枠の軒裏が見えないように計算されています。この縁側、西からの風で夏はさぞかし心地よい場所だったことでしょう。


























 ダイニングルームとキッチンの構造に、女性たちは「こんなキッチンが欲しかった!」と口々に話していました。ダイニングからはリビングの様子あるいは子ども部屋の様子が全て分かるように設計されていましたし、キッチンは3歩歩けば流し台、3歩歩けば食器棚・・・無駄な動きなしに仕事ができる仕組みになっていました。そして、最大の関心事は、カウンターキッチン。引き戸を開けてキッチンからダイニングルームへ料理を渡せることでした。調味料も双方から取ることができます。食器棚の棚板も上から順番に幅が広くなるように作ってあり、開いたらどこにどんな食器があるか分かるように設計してありました。藤井氏は、女性の立場にたった建築デザインをされた方です。当時の女性は和装でしたので、袖のことまで考えたデザインでした。今後、家の新築、リフォームを考えておられる方々には大変参考になります。既製の物が当たり前ではなく、使い勝手のよい家具や動きの動線を考える上で、大変勉強になりました。

 その他、電気冷蔵庫、床下収納庫、水洗トイレ、給湯式お風呂、オール電化などなど、現在の私たちの生活とあまり変わらない設備で羨ましい限りです。

 空気の通り抜けが素晴らしい反面、冬の寒さ対策が大変かなと思いました。4月も半ばでしたが、室内はずっと暖房をつけっぱなしでした。もちろん電気で。電気代が現在の金額で約20万円/月かかっていたそうですので、奥様から苦情が出ていたかも知れませんね。

 藤井氏は茶道や華道にも精通していたとかで、聴竹居とは、藤井氏の雅号だと田邊氏よりお聞きしました。聴竹居は2016年より(株)竹中工務店が所有していますが、維持・管理・運営などは(一社)聴竹居倶楽部が担当しておられます。その方々は実は地域の方々、近隣の方々で、この運営方法を次世代へも繋いでいこうとしておられます。田邊様の聴竹居に対する思いは熱く、時間を忘れて丁寧に説明してくださいました。本当にありがとうございました。参加者全員、感動いたしました。次は、季節をずらして再度見学させていただきたいと思いました。



第10回 智の木協会シンポジウム(創立10周年記念)レポート

 ・日時:平成29年10 月31日(火)

 ・会場:大阪富国生命ビル4階 「社団」テラプロジェクトAゾーン



司会:智の木協会 主幹 加藤 久明 氏



開会のご挨拶:智の木協会 特別顧問 山本 幹男 氏

 智の木協会創立10周年記念シンポジウムに当たり、富国生命保険相互会社の建物のコンセプトについて「フランス人建築家ドミニク・ペロー氏が大樹をイメージしてデザインされましたが、このコンセプトは小林先生の思いと共通しています」と話されました。ちなみにペロー氏は、2015年に第27回高松宮殿下記念世界文化賞を受賞されています(建築部門)。
 ビルの建て替えに際して、富国生命様は「いかに地域の皆様に親しまれお役に立つビルにするか」といろいろ検討された結果、地下にアトリウムや防災センターを造られました。そして、智の木協会はこの建物の中の「コア」との位置づけであると述べられました。4階のスペースは、智の木協会はじめ対象とする世代は子どもからシニアまで、事業は食品、緑化等様々な分野に亘っていること、植と食それに健康をテーマとして様々な団体・企業に参画いただき、企業と消費者あるいは大学と消費者、大学と企業というような形で、産学民連携して多岐にわたるプラスになる情報を発信し活動していることを丁寧に説明してくださいました。そして、全て小林先生が中心になって展開しておられます、と付け加えられました。
 シンポジウムやワークショップでは、これまでお香、竹細工、煎茶、お酒、智の木協会に参画いただいている企業や団体など、講師は多方面からお招きしていることをお伝えされ、本日の伊太祁曽神社禰宜 奥重貴氏のご講演が非常に楽しみですと期待感を示されました。伊太祁曽神社は日本書記に記される「五十猛命(いたけるのみこと)」(木の神様として親しまれている)をお祀りしていますので、智の木協会創立10周年記念に最もふさわしいご講演だと思いますとお話になりました。
 「10年は一つの区切りです。いかに皆様のお役に立てるか、これを原点に一段と努力して参りますので、引き続き皆様のご支援を」とお願いされました。そして、最後に「参加者の皆さまのご健勝とご多幸をお祈りいたします」と締めくくられました。





智の木協会平成29年度活動と『うめきた「植・食、健康」フェスタ』の説明:

智の木協会 代表幹事 小林 昭雄 氏


 智の木協会は2008年5月4日に創立されましたが、その後5月4日は「みどりの日」に制定されました。小林氏は、最近みどり化活動は天命かなと思うようになられたそうですが、ネコ駅長を仕立てて和歌山電鐵を日本一有名にされた両備ホールディングス(株)の小嶋会長から「先生はみどり化、みどり化と言っているが、伊太祁曽神社には太古の昔からみどり化を進めた神様を祀ってあるんですよ」と指摘されたそうです。本日、伊太祁曽神社禰宜 奥氏にご講演いただくことになり、智の木協会の理念はまさに五十猛命(いたけるのみこと)と同じだったということが分かり、そのご縁の深さを感じていますと述べられました。
 創立10年目の節目、事務局がパンフレットを刷新した旨述べられ、パンフレットには取り組む事例などが書かれていて、智の木協会のバイブル的な存在ですのでぜひ目を通して下さり、指針をいただきたいと話されました。事例の2番目のホームページについて、小林氏は「いろいろな情報が盛り込まれていますことから、優良サイトの一つと評価されています。智の木協会は先見性のある企画を10年前に行っているんですよ」と説明されました。
 2017年12月1日(金)〜9日(土)まで、「社団」テラプロジェクトが行うイベントの説明の中で、一番上に「植育イベント」と書かれていることについて、「植育」という言葉は実は智の木協会が最初に提案した言葉だと自負しています、と話されました。
「植育」は既に存在しますという人がありますので、その意味を尋ねますと「植物に関する教育」と言われますが、実は「植育」はもっと奥が深いのです。その定義を以下のようであると説明されました。

  1. 種を播き育てる喜び。
  2. 果実などを収穫する喜び。
  3. 収穫物を分かち合う喜び。
  4. 収穫物を愛で食する喜び。

 「植育」から「食育」へと、小林氏は「植・食、健康」を当初からイメージしていましたので、非常に整合性があると思いますと述べられました。智の木協会の位置づけは、「社団」テラプロジェクトを動かすいろいろなアイディアをいただく知恵を持った人たちが集まっている組織ですと明言されました。都市の中を智の木協会の木で埋めていこうということで、「One Green Project」を推進していて、公道にもOne Green Boxに入れた樹木をみどりのサンタが置いていくという形にしています、そして、植物の育成方法は、テラプロジェクトが開発した新しい水耕栽培システムであり、その展開は評価の高いビジネスモデルであると説明されました。
 12月1日から9日までの「植・食、健康」フェスタのシンポジウムについて、「12月1日は本日の講師、奥重貴氏にもお越しいただき特別対談を行います」とご案内されました。シンポジウムは以下の予定です。

  • 12月1日(金):オープニングシンポジウム「みどり」に込めた次世代へのメッセージ。
  • 12月4日(月):(一社)地域創生連携活動コンソーシアム
  • 「木材から木質化によるイノベーション
  • 12月5日(火):アンチエイジング&スーパーフード「健康に華麗に生きる!」
  • 12月6日(水):都市における建築とみどり その効果と効能
  • 12月6日(水):公園を活かし、公園と生きる
  • 12月9日(土):対談。羽根田選手(カヌー)とモンベル会長 辰野氏、小林代表幹事(テラプロジェクト理事長)(会場:うめきたガーデン)

  • 5月、ハンガリーヘレンド社を訪問、市販品のカップ&ソーサ―「アポニーグリーン」に「MIDORI-SANTA」の文字を入れていただけることが決定。200客限定。日本の企業には無い意識の高さを実感。販売の一部は智の木協会に寄付される。
  • 8月、智の木協会企業会員の、両備ホールディングス(株)様に、岡山高島屋屋上に「みどりのサンタガーデン」を作っていただいた。ロゴマークデザインは、九州観光客車を設計された水戸岡氏によるもの。
  • One Greenの切手ができた。智の木協会のトレードマーク「植育」の文字が入っている。

  • みどりのサンタのぬり絵を作る準備をしている。

 大阪富国生命様のビルが「いのちの森」として生まれ変わり、ここからみどりの情報が関西に、日本全体に世界に発信されていくことを熱望しており、この先10年を見据えて活動を進めていきたいと思っておりますので、今後ともご支援いただきたい旨お願いされました。





講演 伊太祁曽(いたきそ)神社 禰宜 奥 重貴 氏
タイトル:「木の国、こんにちは〜木の神様のお話〜」

座長:智の木協会 代表幹事 小林 昭雄 氏

 座長から講師の奥重貴氏について、若くて意欲に燃えた方であると紹介がありました。
 伊太祁曽神社は、和歌山電鐵伊太祈曽(いだきそ)駅から徒歩5分程のところに位置しています。たま駅長で有名な和歌山電鐵の「ニタマ駅長」が、「たま駅長」の後任として貴志川駅に赴任するまで「ニタマ」は伊太祈曽駅の駅長でした。
 猫のたまを駅長として象徴的な位置において、廃線の憂き目に遭っていた貴志川線を復活に導かれた両備ホールディングス(株)の小嶋会長様には、平成26年7月16日第7回シンポジウムでご講演いただきました。その際に、貴志川線の復活について、最大のポイントは「沿線住民の方々の残したいという熱い思い」だというお話がありました。この度、活動の中心に伊太祁曽神社宮司禰宜の奥氏がおられたということで、そこに小嶋氏と奥氏との接点があったことが分かりました。
 元々、沿線には7キロ位の間に伊太祁曽神社、竈山(かまやま)神社、日前(ひのくま)神宮・国懸(くにかかす)神宮の3つの大きな神社があり、その3つの神社を結ぶために山東軽便鉄道が引かれていたそうですので、廃線にするわけにはいかないとの思いが強かったということでした。
 伊太祁曽神社に“木の神”「五十猛命」が祀られていることについて、日本書記に記されているとして以下のように説明されました。「五十猛命素戔嗚命(すさのおのみこと)の子どもで、素戔嗚尊命が高天原から追放された際に一緒に出雲国に降りてきました。木が一本も生えていない地上を見て、素戔嗚尊命は自身の体毛を抜いて檜や杉(建物に)、樟(造船に)を創りました。そして、五十猛命に命じて木種を植えて廻らせました。五十猛命は二人の妹、大屋津姫命(おおやつひめのみこと)、都麻津姫命(つまつひめのみこと)と共に筑紫国から植樹を始め、最後に紀伊国に鎮まりました。この神話から五十猛命は“木の神”まさに「植樹の神様」で、智の木協会の理念と一致します。この地は木の神の鎮まる場所の意で「木の国」と呼ばれるようになり、やがて奈良時代に国名を漢字二文字で表すようにとの方針で「紀伊国」と呼び名が変わっていきました。」
 伊太祁曽神社では、以上のお話を分かり易くした「木の国こんにちは」という絵本を作成し販売しておられます。
 次に「イタテ神を祀る式内社」について説明していただきました。式内社とは、平安時代中期に編纂された延喜式という書物の巻9・巻10の神名帳に載っている社神のことだそうです。神名帳には、3132座(神様はお座りになりますので)、神社の数では2861社が朝廷から祭祀に際して幣帛(へいはく)を受け取る神社として記されているとか。イタテ神を祀る神社は15社、その漢字を見ますと共通点があり、その中に伊太祁曽神社も含まれています、と奥氏。紀伊国式内社は、31座28社が記されていますが、31座中6座が植樹神、式内社の中にはランクがあり、大社と小社があり、大社14社中4社が植樹神だそうです。
















 次に、伊都郡海草郡、那賀郡、在田郡、牟婁郡の神社について、伊太祁曽神社海草郡にあり、海草郡には日前・国懸神宮(ひのくま・くにかかす。現在は一つの神宮になっています)、大屋都比賣神社、都麻津比賣を祀ってある高積比古(たかつみひこ)神社と高積比賣(たかつみひめ)神社、鳴(なる)神社、そして五十猛命を祀ってある伊達神社などがあることをお話になりました。アンダーラインの神社は、名神大社であり、月次祭(つきなみさい)、相嘗祭(あいなめさい)、新嘗祭(にいなめさい)を行う一番格の高い神社とのことです。ちなみに、世界遺産に登録されている熊野早玉神社は大社ではありますが名神社ではなく、熊野坐(くまのにます)神社は名神社ですが月次祭新嘗祭をやりなさいと書かれていない、また、熊野那智大社は、そもそも延喜式内社でもありませんと説明されました。
 五十猛命を祀る神社は全国に約300社あると言われており、その総本宮的な位置付けが伊太祁曽神社ですが、伊太祁曽神社という名の神社は少なく、イタテ、熊野神社杉山神社などの名前がついている神社と、他に主祭神ではなく境内に末社として祀っている神社とを含めて300社ということだそうです。
 伊太祁曽神社は、根来寺豊臣秀吉が戦ったことにより全て焼き尽くされて安土桃山時代以前のものは何も残っていませんが、約二千年前は現在の場所より北西に位置していて、五十猛命が祀られていたという記録が日前・国懸神社に残っているとのことです。伊太祁曽神社は格の高い神社であることを証明する「官幣社」に選ばれていて、天皇から玉串料をいただかれ、「幣饌料(へいせんりょう=幣帛料と神饌料を合わせた金幣)」を数々いただいています、と奥氏。また、植樹祭で天皇皇后両陛下が和歌山へお越しになった際にも「和歌山へ来ましたよ」という印として「幣饌料」をいただかれたそうです。幣帛料は、神社の建て替え時や特別なお祭り(100年毎)の時に神社本庁に申し出ていただくもので、伊太祁曽神社は、最近では、平成14年10月に1300年祭(創建が分からず、702年を一つの節目にしています)と、平成25年に社殿の屋根の葺き替え時にいただかれたそうです。



伊太祁曽神社の主な祭り〉

1.木祭。毎年4月第1日曜日開催。建築、造船、炊事、製鉄用の火力等々として使われてきた木に感謝する。CO2をO2に変える、木は大きな役割を担っている。植樹することでそれが成し遂げられる。環境問題で、木が大事であると気付いた人たちがお参りに来る。お祭りの後、植樹祭をする。餅まきで400キロの餅をまく。チェンソーカービング実演。城所啓二さんが翌年の干支を奉納する。一回りして全ての干支が揃っている今は、以前の干支のリメイクを行っている。平成30年4月1日、木祭では、イノシシがリメークされた。
2.茅輪(ちのわ)祭。7月30日、31日。大国主の命を助けたのが伊太祁曽神社の神様だったことが、古事記に載っている。そこから伊太祁曽神社は「厄難除命神様」とも言われている。それを絵本にしたのが「いそげ、いそげ、木の国へ」(伊太祁曽神社出版)。“輪をくぐると難を除けられる”。地球温暖化防止として最近10年くらい、打ち水大作戦を行っている。夜は舞台を作り、地元住民と共に芸事を奉納しており、形になり始めた。
3.例祭・神幸祭(秋祭り)。10月15日とその後の日曜日。3基の神輿を出す。350年前のもので今も担いでいる。15日午前中に祭典を行い、境内で太鼓の演奏奉納する。毎年この時期に国内で活動している人たちが、太鼓演奏に帰って来てくれる。太鼓の後に神輿が出る。200人位の行列ができた。神輿とたま電車が踏切で遭遇したこともある。
4.卯杖(うづえ)祭。1月15日。主たる神事は夜。14日夜、小豆粥を炊きその中に竹筒を沈めて、中に入った粥の量で稲や農作物の出来を占う。伊太祁曽神社では、約1m位の梅の枝を束ねて卯杖を作り、この杖で地面を叩きつけて邪気を祓う。その後、火きり棒と火きり板を擦り合わせて火を起こしてどんど焼きを行う。また、神社の行事ではなく地元で行われている成人式の儀礼で、裸参りの習慣もある。裸で腰にしめ縄を巻いて神社まで4キロ位を走り、神前の杉の木にしめ縄を巻きつけ、無病息災を祈願するというもの。一時途絶えていたが、神社からの声掛けで復活した。






















〈神社の説明〉
1.燈籠について。「大坂積方中」(木材の組合)、「和歌山荷主中」(運送会社)、「紙仲間」(製紙会社)の3つに燈籠がある。大さかの坂が阪でないこと、また文字が右から左へ書かれていることから、奉納の時期は明治以前であると言え、昔から伊太祁曽神社へお参りしていたことが分かる。
2.歌碑(本居宣長、本居太平)が残っている。
 ・本居宣長:朝もよし 
       紀路のしげ山分けそめて
       木種まきけん
       神をし思ほゆ
 ・本居太平:山々の
       木々に栄を紀の国(木の国)の
       栄と守る
       伊太祁曽の神
3.チェンソーカービング
4.厄難除けの俣くぐり。
5.御井戸。
6.大鳥居(一の鳥居)。



 大鳥居について、次のように説明してくださいました。「2017年7月に鳥居を新装しました。横木の部分は材を削り、縦の二本の材は平成25年伊勢神宮遷宮をした折に外宮板垣御門鳥居に使われていた古材を頂戴しました。」伊勢神宮は20年に一回一等級の檜を使って建て替えられますが、使い捨てではなく次に使うところが決まっており、そのまた20年後にも、また次の20年後にも、つまり60年間使い回されているそうです。式年遷宮は1300年の歴史があり、リサイクル、植林を繰り返しながら行われていることを強調されました。
7.磐座(いわくら)。神様が降り立ったところ鳥上峯(島根県船通山)からゴールの伊太祁曽神社へ、磐(約6トン)をいただいたとのことです。



 最後に、「いろいろなご縁が繋がって、10年目という節目に講演させていただき、嬉しいです」と話され、代表幹事は「こういうお話をお聴きしますと日本人としての誇りを感じますね。現地を訪ねて日本人のルーツに触れて頂きますと、この上もない豊かな心情が湧いてきます。ぜひ皆さんお訪ねになってください」と結ばれました。


























講師を囲んで集合写真撮影



交流会

2018-1-29 新年講演会・交流会のご報告

 多くの方々にご参加いただき、急遽、講演会・交流会を別々の会場に分けて行いました。







〈講演会〉

 2018年、新年講演会・交流会、智の木協会 理事長 豊田政男氏から新年のご挨拶をいただきました。2年ほど前にニュージーランドで、マヌカの花を実際にご覧になったそうです。フトモモ科の可愛らしい花で桜のように満開になるそうです。

























 智の木協会代表幹事 小林昭雄氏より、智の木協会平成29年度(2017年度)(平成28年10月1日〜平成29年9月30日)の活動報告がありました。

 ・第9回シンポジウム(平成28年10月31日)

 ・第11回ワークショップ(平成29年8月1日)

 ・創立記念講演会(9周年)(平成29年5月6日)

 ・新年講演会(平成29年1月17日)

 ・第18回イーヴニングトーク平成28年12月9日)

 ・第19回イーヴニングトーク(平成29年3月22日)


 ・女性専科 第2回(平成29年2月21日)

 ・支援関係

 次に、この一年の智の木協会の活動の中で、最も象徴的な出来事として、世界的に著名なハンガリーの磁器製造メーカー、ヘレンド社との交渉の成果を語られました。緑色と金色の市販品コーヒーカップ「アポニーグリーン」に「MIDORI-SANTA」「One-Green」の文字を入れていただけることになったと経過を説明されました。スロバキアで事業をされている(株)マイティの鈴木様(智の木協会企業会員)のご支援で、平成28・29年の2回、ヘレンド社を訪ね、智の木協会の精神(地球温暖化阻止、みどりの大切さ)を説き、賛同を得、200客限定で製造していただけることになりました。

 今後、智の木協会主導でヘレンドカフェをやっていきたい旨、想いを話され、お力添え、アイディアをいただきたいとお願いされました。



講演 株式会社コサナ 代表取締役 寺尾 啓二 氏


 この度は、講師に智の木協会企業会員(株)コサナ代表取締役 寺尾啓二氏をお招きし、「マヌカハニーとαオリゴ糖による美容と健康」と題してお話いただきました。マヌカハニーはαオリゴ糖との出会いによって素晴らしい形となった旨のお話でした。






 本題の前に、寺尾氏が現在中心的に進めておられる「ヒト(人)ケミカル」についてお話になりました。日本人は長寿になりましたが、介護される年数が非常に長いという特徴があり、過去に「本当は健康寿命が短い日本人の体質」というタイトルの本を出版されています。「ヒトケミカル」とは、ヒトの生体内で作られている生体を維持するための機能性成分のことで年齢とともにその生産量は減少してくことが知られています。そこで、ヒトケミカルを摂取し、運動をプラスすることで補完し、いつまでも若々しく生きられる、つまり健康長寿をめざすことができるということです。また健康長寿を目指すための本、第2弾として、春には「日本人の体質に合った本当に老けないための栄養素(仮)」を出版されます。






 ドイツ ワッカーケミー社に入社された寺尾氏は、その後シクロデキストリンの研究に携わられ、2002年、シクロケムを設立されましたが、応用研究ができる会社が必要になり(株)シクロケムバイオを設立、そこで食品分野でシクロデキストリンを用いた機能性食品が作られ、それを消費者に発信する会社として(株)コサナを作られました。3社が連動して一つの会社のように動いています。2007年にはニュージーランドのマヌカヘルス社と独占契約され、マヌカハニーを取り扱われるようになりました。寺尾氏の会社は、マヌカへルス社からのマヌカハニー製品を日本市場で売るには、マヌカハニーの機能性や健康になれる理由をアピールする必要があり、サイエンスに裏付けされた信頼ある会社として選ばれたそうです。

 一般的な蜂蜜はハチが花を選べないため、いろいろな花の蜜が混ざっている場合が多いのですが、マヌカの花はニュージーランドで12月にのみ咲き、山全体がマヌカの花で白く染まるそうですので、まさに純粋な「マヌカハニー」と言えます。






 マヌカハニーは、ニュージーランド先住民族マオリ族が樹液や葉を薬として用いていたことから、天然のサプリメントと言われています。元来、蜂蜜には抗菌性があり、その成分は過酸化水素ですが、マヌカハニーはそれだけでは解決できない効能があります。マヌカハニーの表示には「MGO 、UMF」などがあります。UMFは「Unique Manuka Factor」で、マヌカハニーに変わりはありませんが、正確な数値を分析できる方法ではないために、MGOの数値と比較することはできないそうです。MGO100+とは、マヌカハニー1kgに100mg以上のメチルグリオキサールが存在することを意味し、ニュージーランドのマヌカヘルス社の製品ではMGOでグレードを表記しています。数字が大きいほどメチルグリオキサールの含有量が多いということになります。メチルグリオキサールは、強い抗菌活性作用を持っていて、αCD(αシクロデキストリン)と組み合わせると抗菌力は向上するそうです。





 以下、マヌカハニーの効能効果です。

 ・口腔ケア(虫歯、歯周病扁桃腺炎の治療、口臭予防)。

 ・ピロリ菌を除去する。

 ・腸内環境の改善。悪玉菌が減り、善玉菌が増える。免疫力向上。

 ・激しい運動、喫煙の際には、活性酸素が発生しそれが老化の原因

  になっているが、それを抑える。

  他の蜂蜜では見られない効果、抗酸化作用。

 ・風邪、インフルエンザ

  予防。インフルエンザの

  特効薬と組み合わせた場合、
  効果はさらに増す。

 ・のどの痛みの緩和。

 ・がん細胞増殖抑制効果。マヌカハニー抗がん剤を併用すると、

  正常細胞が増えてがん細胞を減らす。

 寺尾氏は元々、シクロデキストリンの研究をされていて(株)シクロケムを設立されましたので、ここからマヌカハニーシクロデキストリンとの融合が生まれることになります。シクロ(環状)デキストリンオリゴ糖)には、α、β、γの3種がありますが、最も小さいαオリゴ糖はそれ自体に食物繊維としての働きだけでなく抗菌作用や抗アレルギー作用があり、様々な健康増進を補充する効果を有するため「スーパー難消化性デキストリン」と呼ばれています。また、αオリゴ糖は、不安定ながら有用である成分を体内にデリバーする役目も担っています。腸内フローラを改善し、腸内を弱酸性にすることによって大腸がんの予防にもつながるそうです。






 マヌカハニーはαオリゴ糖と相性が良く、寺尾氏は双方の効能が相乗的に発揮される製品を製造されました。それが「マヌカハニーα‐オリゴ糖パウダー(MAP)」です。

 マヌカハニー(MGO)とαオリゴ糖による抗菌性相乗効果は下記の通りです。

 ・善玉菌増殖作用

 ・骨粗鬆症予防効果

 ・体重増加抑制作用

 ・脂肪量増加抑制作用

 ・抗炎症作用

 ・スキンケア効果

 ・マヌカハニーGI値グリセミックインデックス

  食品に含まれる糖質の吸収度合い)低減





 健康維持増進に素晴らしい効果があるマヌカハニーですが、寺尾氏から「マヌカハニー100%キャンディー」について以下の指摘がありましたので、付記します。

 「糖質から水分を除去して固形化するためには加熱が必要です。加熱する際にHMF(ヒドロキシメチルフルフラール)という有機化合物が発生します。国際規格では、HMFを40mg/kg以下に抑えるよう指定されていますが、100%キャンディーに含まれるHMFは200mgを超えています」と注意を促されました。

 参加者から「ヒトケミカル」についてのご講演を望まれる方が多数でしたので、また企画したいと思います。


 (株)コサナ様からMGO100+ 50gとマヌカハニー青汁1包(3g)を参加者全員にご提供いただきました。インフルエンザ流行中でもあり、すぐに試食、注文された会員も多かったようです。

 寺尾啓二様、ありがとうございました。







交流会





第11回 智の木協会ワークショップ レポート

 ・日時:平成29年8月1日(火)
 ・会場:大阪富国生命ビル4階 「社団」テラプロジェクトAゾーン

開会のご挨拶:智の木協会 専門会員 掛川 敏幹 氏

 富国生命保険相互会社不動産部の掛川様からご挨拶をいただきました。富国生命保険相互会社様には、智の木協会設立と同時に企業会員としてご入会いただき、今年で10年目になります。

 掛川様は今回初めてのご参加ですが、「毎回、ユニークで有意義な勉強会ということで、楽しみに来ました」と述べられました。最近は地震、豪雨、竜巻等々災害が頻繁に起こり、想定外と言えないくらい方々で災害が起きていることから、「本日は(株)カスタネット植木様を講師にお迎えしております。日常どのように防災意識を持てばよいか、また、自分の身を守るヒントお教えいただけるのでは」と期待感を示されました。

 また、智の木協会については、平成20年5月4日、みどりの日に発足し、今日まで様々な活動を行って来ており、認知度が上がり名前も知れ渡り、アイディア、知識をいろいろなところで具体化させていき、かなりの実績を積み上げていますので、これからも活動の場を広げていきたい、と申されました。

 最後に「参加者の皆さまのご健勝とご多幸をお祈りいたします」と締めくくられました。





智の木協会と関連行事に関する説明:智の木協会 代表幹事 小林 昭雄 氏







 2017年12月1日(金)〜9日(土)まで、「社団」テラプロジェクトと智の木協会共同企画、植育イベント「植・食、健康」「みどりのサンタフェスタ」についての説明があり、これまでに決定している12月1日開催のオープニングシンポジウムの講師4名についてご紹介いただきました。







・山折 哲雄 氏 宗教学者 自然環境文化推進機構 代表理事

・鳥井 信吾 氏 サントリーホールディングス株式会社 副会長

・平野 雅章 氏 自然環境文化推進機構 理事 即成院 住職

・奥  重貴 氏 伊太祁曽神社 禰宜



 山折先生は、テラプロジェクトと智の木協会の活動を評価して参画くださることに、また、和歌山県にあります伊太祁曽神社は、日本に最初に植林をした「みどり化」の神様を祀ってある神社であり、禰宜の奥氏にはオープニングシンポジウムと10月31日(火)に予定しています第10回(創立記念)シンポジウムの講師をしていただくことを説明され、今後の予定に入れていただくようお願いされました。





講演 株式会社 カスタネット 代表取締役社長 植木 力 氏

 (株)カスタネットさんは、創業17年の京都の中小企業で、従業員は公式には10名だそうですが、外部から100名以上の会社ですか?と尋ねられるような事業内容を展開しておられます。「カスタネット」の社名は、「カスタマー(お客様)」とネットワークで事業を拡げ、打てば響くことを目指して付けられたそうです。元々は、法人向けにオフィス家具、オフィス文具、OA関連消耗品、工場作業用品を販売する会社だったようですが、社会と共鳴する企業を目指し、社会貢献と事業がシンクロする姿を追い求めておられます。

 ベンチャー企業では日本で初めて社会貢献室をつくり、植木氏ご自身が室長になられました。社会貢献と事業を車の両輪としてとらえておられ、営利も社会貢献も目指すユニークな会社経営をなさっています。いつか必ずそのような社会が来るという信念に基づいています。

 その根底には「買いやすさ、安さを追求してオフィス用品を販売しても、それでは大企業と勝負した時早い段階で追いつかれ追い越されてしまうのではないか。しかし、社会貢献という要因は、大企業と真っ向から勝負できる」とブレることのない信念がありました。

 社会貢献を打ち出してもそれ程甘くなく、2年で6千万円の赤字を出してしまったこともあるそうですが、「どうせなら、社会貢献をしている企業からオフィス家具を購入したい」との1本の電話で社内の空気が一変したとか。3千万円の受注があり、その時点から従業員も意識が変わり「社会貢献」の言葉を植木氏以上に使うようになったそうです。

 社会貢献としては、カンボジアに小学校寄贈、カンボジア給食支援、障がい者スポーツ支援などがあります。カンボジアでは、「何とかしたい」と言ったのを「学校を建てる」と通訳が間違えて伝えたことが発端でした。

 2011年3月11日に起きた東北大震災。植木氏は現地へ赴き現状を視察。そこから先人の知恵に学ばなければならないことを悟り、また、被災者の困りごとを100人に尋ねられたところ、90%以上の人が以下の2点について答えたそうです。

  1. トイレ
  2. 携帯の充電器


 「トイレ」が一番の問題だったようです。「食べ物」という答えが返ってこなかった理由は、恐怖心から食欲が無かったからだそうです。男女、年齢に関係なくトイレに関しては恥ずかしさが付きまとい、恥ずかしい体験は年齢に関係なく心に残るものです。「死ぬまで忘れない」という言葉がそれを裏付けています。

 植木氏は、東北大震災の1年前から防災用品を手掛けるご予定だったようですが、実際に起こってしまって震災から次のことを学ばれました。

 *いつでも、どこでもプライバシー。

 *売る立場ではなく、使用する立場で開発すること。

これまでは、メーカーが作った商品を右から左へと商売をされていましたが、災害時にはそのような物は使っていなかったことに植木氏は気づかれました。そして被災者の声が「マルチポンチョ」の開発に繋がりました。

 『ゴミ袋が一番良かった!穴をあけて被ったら一番暖かかった。透けないように最大のサイズのゴミ袋で着替え、用を足した。毛布・アルミシートは被ると作業ができない、カッパは隙間があるから寒かった、等々』

 そこで植木氏は、東北大学の先生の言葉「災害の時にしか使えないものは、真の防災用品ではない」を念頭に、「マルチポンチョ」を開発されました。断水の際でも困らないように「紙オムツ」も付けられました。凝固剤の備蓄についても触れられました。「マルチポンチョ」の最大のポイントは、肩のところにミシン目を入れてあり、ミシン目を切り離すと手を出すことができ、用途が拡大します。色が黒なので暗いイメージだと言われたとか。でも、透けてはいけないのです。実証実験の場がなく売れ行きは良くなかったそうです。


 実際に社員の方が使用方法を示してくださいました。この「マルチポンチョ」は、防寒対策、屋外でのトイレ(透けません)、屋外での着替え、突然の雨に、と多くの場面で使用できます。僅か70gと軽量ですので、小さく折りたたんで日常的にバッグに入れておきますと、突然の困りごとに対処できます。特に女性の必需品だとおっしゃっています。まさに「防災意識を持ち歩く」のです。「ゴミ袋や」と言われたことをきっかけに「くまもんのデザインのポーチ」を販売することになりました。
 2016年には今度は熊本で大地震が起きました。その前年に「そなえる.com」防災用品事業を立ち上げ、植木氏は自ら「防災ソムリエ」として登録されました。そして、カスタネットさんは、熊本へ「マルチポンチョ」を6千枚寄付されました。その評価は、着替え・身体拭きの際に、食事の配給の際に着たままで運ぶことができた等、良い反応でした。また、物干しに困っていた女性達には、ポンチョに紐を通して使えることを伝授、大変喜ばれたそうです。

 植木氏は、いつ起こるか分からない災害に対処するためには、職場や家庭での備蓄のみならず、「持ち歩く防災グッズ」が必要との結論に達し、販売しながら話をし、SNSを使って活動を紹介、2016年8月1日以来毎日動画を配信しておられます。新しいビジネスモデルとして、「粗品を配る際には防災用品を配ってほしい、売り上げの10%を熊本城再建のために寄付していますので」と訴えておられます。

 「社会貢献と事業を車の両輪として頑張っていますが、事業の方がなかなか大きくなりません。それでも、赤字が出ても社会貢献は使命と考えて進めています」と締めくくられました。



Q:冊子の中の黄色のポーチは、子ども用ですか?

A:子どもの時から防災意識を持ち歩いてほしいので、これから販売しようと思っています。防犯ブザーと同じような考えです。

Q:ヒアリ、セアカコケグモ、ヘビに噛まれたなど最近は毒を持った虫に手を出して被害に遇う子どもがいます。防災グッズを広められる際に「護身」という意味で、ぜひ、今後はこのような虫にどう対処するのか、啓発もやってほしいです。

A:先人たちの知恵を引き継いで後世に伝える、それが本当の防災だと思っています。マムシに触ってはいけない、それは先人の知恵です。津波がきたら石碑よりも上に逃げる、それと同じように考えていきたいです。





閉会のご挨拶 智の木協会 専門会員豊田氏名代 松村 和幸 氏

 「建設会社ということで、災害についてお手伝いすることが多いです。その中で“災害に備える”という考え方は会社の方針であったり我々も意識していつも持っていますが、“防災意識を持ち歩く”という発想はありませんでしたので、大変参考になりました」とお礼を述べられました。

 清水建設様は、富国生命ビルに提携施工という形で携わられたことがご縁で、平成22年から智の木協会の活動に参画してくださっています。富国生命ビルについては、フランスのドミニク・ペロー氏が富国生命さんの企業イメージである「生命・健康・成長」などのキーワードを汲み取り梅田に大きな樹を想像して建築されたと説明されました。

富国生命さんと智の木協会は考え方・理念が非常に共通していますので、我々も参画させていただいているんです」と松村氏。

 「今後も智の木協会の活動がますます活発に行われますよう、皆様よろしくお願いいたします」と結ばれました。


2017-11-25 「植育」出前講座のご報告

  • 日時:平成29年11月25日(土) 14時〜16時
  • 会場:豊中市春日神社(宮山町) 
  • 講師:小林 昭雄 氏 智の木協会代表幹事
  • 題目:「春日神社の杜を見てみよう」   
  • 主催:春日神社鎮守の杜を守る会・つつじ保存会
  • 参加者:地域の子どもたち(桜井谷小学校)、保護者、学校関係者、地域の「歩こう会」



 ※台風21号により、杜だけでなく建物にも甚大な被害を受けました。





1. 春の春日神







2. 境内の「コバノミツバツツジ







3. 鎮守の杜を歩いて現状を知る







4. 折れた松の木








5. 講師の話を聞く




2017-5-6 創立記念講演会(9周年)のご報告


 智の木協会は、創立以来9周年を迎えました。智の木協会の大きな理念の一つに、「植育」のPromotion活動(Go Greeningの推進)があります。10周年目に入り、ますますその推進に力を注いでいきたい旨のお話が小林代表幹事よりありました。
 具体的な例として、「砂漠に緑を運び、都市に緑を運ぶ、そして、心にみどりを運ぶ」役割を担う「みどりのサンタ」(MIDORI‐SANTA)があります。
 昨年12月4日に「うめきたガーデン」で、「みどりのサンタとクリスマスツリー作り!」を開催しました。今年は12月1日〜9日の間、「うめきたガーデン」を会場として開催されます「植育」イベント「みどりのサンタの植・食、健康フェスタ」について説明がありました。








 ハンガリー ヘレンド社のアポニーグリーン(グリーンゴールドのツートーンカラー)のカップ&ソーサ―に「みどりのサンタ」のロゴを描く計画が具現化しつつあり、5月中旬にヘレンド社を訪問します。
 お土産は、谷岡一治氏撮影の「富士山と桜」の写真に特殊技術でアポニーグリーンのカップ&ソーサ―を入れ込んだ額です。
 谷岡氏から小林代表幹事へ手渡されました。



 代表幹事は、「みどりのサンタ」ロゴ入りのカップ&ソーサ―が完成した暁には、この磁器を使った Herend Café を開催したいと話されました。










創立記念講演会に付き、乾杯しました。




























 吉川雅之氏に「お茶を語る」−茶花の効能−と題してご講演いただきました。
 お茶は緑茶、抹茶、番茶等々いろいろな形で日本人の生活に根付いています。茶葉の効能はよく知られていますが、あまり関心を持たれていなかった「茶花」の効能について詳細に、難解な内容を平易に解説してくださいました。
 茶花の主成分はチャカサポニンであり、それに接触抑制、脂質や糖の吸収遅延、胃排出能抑制、小腸運動亢進、抗肥満作用などのメタボリックシンドローム予防効果を見出されたそうです。
 茶花は“ぼてぼて茶”(出雲)として古くから食用にされていたそうですが、これまでは葉に比べて利用度は少なかったと思います。花が咲いたら花茶に(蕾の段階がよいそうです)、新芽を緑茶に、最後は番茶にと何度も楽しむことができる茶木を育ててみましょう、という会話も聞こえてきました。





























 本場のセイロンティーです。
 スリランカで購入して持ち帰っていただきました。
 参加者に1袋ずつお土産にお持ち帰りいただきました。

智の木協会 第9回シンポジウム レポート

 平成28年10月31日(月) 17時30分〜18時30分

 於:大阪富国生命ビル4階 「一社」テラプロジェクト Aゾーン



司会:智の木協会 主幹 加藤 久明 氏
開会のご挨拶:智の木協会 特別顧問 平井 堅治 氏


 お集まりの皆様にご参加のお礼を述べられました。そして、講師の大澤先生について「日本を代表する食品科学の研究者であられ、2006年ゴマに含まれる成分、抗酸化作用を持つセサミノールに大腸ガンや動脈硬化を抑制する効果があることを発見されました。また、ココアの機能性成分カカオポリフェノールの抗酸化機能に関する研究について発表しておられます」と紹介されました。

 智の木協会は「植」と「食」の二つを大きな柱として掲げており、これまでは主として「植」について取り上げてきましたが、本日、初めて「食」について講演いただきます。「医食同源という言葉がありますが、生涯10万回位食を摂すると言われています。食と健康との関連ということで、貴重なお話をお聞きできますこと、楽しみにしています」と期待感を示されました。

 智の木協会は平成20年5月4日に創立され、ワークショップやシンポジウムを開催し、本日は9回目になりましたが、「智の木協会から発信する提言や理念が大阪のみならず広く社会に浸透し、持続可能なよりよい社会に貢献していくことを願っています」と結ばれました。





智の木協会1年間の報告とご案内:智の木協会 代表幹事 小林 昭雄 氏

 智の木協会平成28年度活動記録に基づき、1年間(平成27年10月〜平成28年9月)の活動を説明されました。


 ・創立:2008年5月4日。
 ・第8回シンポジウム:
  平成27年12月4日(金)京都大学名誉教授 西田 律夫 氏
  「実のなる木を害虫から守る〜昆虫誘引物質の探索」
 ・第10回ワークショップ:
  平成28年5月31日(火)小川流煎茶 家元嗣 小川 可楽 氏
  「煎茶への誘い―文人と喫茶」
 ・創立記念(8周年)講演会:
  平成28年5月7日(土)日本一明るい経済新聞 編集長 竹原 信夫 氏
  「元気な企業の舞台裏」
 ・新年交流会:
  平成28年1月23日(土)
  大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 応用生命科学専攻 
  准教授 岡澤 敦司 氏
  「ノーベル平和賞級?猛威をふるう寄生植物による被害の克服を目指して」
 ・第17回イーヴニングトーク
  平成27年10月20日(火) 信州大学名誉教授 廣田 満 氏
  「信州―きのこの森を語る」
 ・女性専科 第1回「毎日を明るく前向きに生きるための」講習会:
  メイクレッスン
  平成28年8月23日(火)大阪大学 渉外本部 未来基金担当
  特任専門職員 吉田 富士江 氏
  参加費を未来基金に寄付
 ・第10回 グリーンツーリズム 大阪サイエンスクラブと共催:
  平成27年12月8日(火)「竹中大工道具館見学会」
 ・第11回 グリーンツーリズム
  平成28年9月17日(土) 「京都 小川流 煎茶に親しむ一日」
 ・支援関連:
  平成27年11月20日〜12月25日
  「社団」テラプロジェクト主催 クリスマスツリー市民選手権参加
  平成27年11月29日(日)「大阪みどりのサンタ・ラン」参加
 ・新規事業「この木ちの木」(第一世代)
  平成28年7月25日(月)〜29日(金)
  ひばりヶ丘こどもアカデミー代表 辻本 あかね 氏他
  「まちラボ 夏の学校」
 「この木ちの木」について代表幹事は次のように説明されました。「智の木協会にぜひ子ども達の参加をということで、近藤理事を中心に進めています。結果、子ども達も大変喜んでいましたし、子ども達が持つ可能性を強く感じましたので、今後色んな事業を進めたいと思っています。」
 そして、今年度の2つの大きなみどりのサンタイベント「11月27日、大阪城公園でのみどりのサンタ・ラン」「12月4日、うめきたガーデンでクリスマスツリーつくり」を智の木協会の後援を得て参加実施する旨の話がありました。特に、「うめきたガーデンでは、1000人集まって人文字を作り、それをドローンで空撮し、クリスマスライブ、インターネット放送等々インスタグラムに掲載して広めようという催しですので、智の木協会の方々は阪急電車、観覧車に乗るコースで、多くの方々にご参加いただきたい」とお願いされました。また、「智の木協会のコンセプトがようやくまちに動き出したということになると思いますので、来年に向けて智の木協会の力を示していきたい」と抱負を述べられました。




講演:大澤 俊彦 氏 愛知学院大学 心身科学部 健康栄養学科 教授
          名古屋大学名誉教授
座長:智の木協会 代表幹事 小林 昭雄 氏





講演
 東京大学農学部農芸化学科で学ばれた大澤氏は、小林代表幹事や小菅事務局長とは同世代・同分野でお互いに若い頃から知己の中だったようです。東大ではキクの根を出すホルモンの研究を、オーストラリアではユーカリのホルモンについての研究を3年間されました。
 その後、酸化が老化に関係しているのではないかということから、抗酸化食品について研究を始められ、名古屋大学で30年以上、愛知学院大学で8年続けておられます。愛知学院大学曹洞宗の大学で、今年創立140周年を迎え、心身科学部とは、「心と身体を科学する」唯一愛知学院大学にのみ存在する学部だそうです。大澤氏は、8年前に(株)ヘルスケアシステムズを立ち上げられ、現在、愛知学院大学名古屋大学生命農学研究科、(株)ヘルスケアシステムズの3機関に所属して「食の機能性」について研究されています。
 健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動)について説明されました。肥満者の割合は全国で約3割。しかし、今の若い女性たちは逆に痩せている人が多く、これは次に生まれてくる子どもたちに問題が起こりやすい、と第2次世界大戦時の例を挙げて警告されました。戦時中、ドイツ・ポーランドでは飢餓状態でたんぱく質不足で生まれた子どもは、現在、生活習慣病の巣になっているとのことでした。その他、野菜の摂取量について、食塩の摂り過ぎは禁物、運動をしましょう、たばこ・酒はほどほどに等々書いてあるそうです。
 次に曹洞宗と精進料理についてお話いただきました。本山は永平寺、東京は鶴見の総持寺道元禅師によって開かれた曹洞宗、寺で僧侶たちは無駄のない食事、精進料理を食していますが、道元による「典座教訓(てんぞきょうくん)」といういわば料理の仕方、作法を説いた書がありそれに法って料理されているそうです。
 しかし大澤氏は「精進料理はやはり塩分が多い、意外とカロリーも高い。必ずしも良いとは言えません。昔の伝統だけにとらわれず、新しい科学でやりましょう」とおっしゃっています。
 これまでは、糖質、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルを五大栄養素として「守りの栄養学」と位置づけ、糖質・脂質の摂り過ぎに気を付けようと発信してきましたが、それ以外に、第六の栄養素として食物繊維、第七の栄養素(非栄養素)として、ポリフェノールクロロフィル、イオウ化合物、イソチオシアナート(辛味成分)が挙げられ、大澤氏はこれを「攻めの栄養学」と位置付けておられます。
 ポリフェノールの言葉自体あまり一般的ではなかった時代から大澤氏は、ゴマのポリフェノール、カカオポリフェノールの研究をずっと続けてこられ、カカオポリフェノールの方は、今年21回目の国際シンポジウムを開かれました。
 イソチオシアナートはワサビの辛味で、アメリカではブロッコリースプラウトがガン予防になるということで売られているとか。摂り過ぎは甲状腺肥大の原因になると言われていますが、適切に摂ることにより解毒力を高める効果があり、日本人はワサビを5g程度、ゴマでも5〜10g、よくすって食するとよいそうです。サプリメントと比較して色んな成分が含まれていることがその理由です。
 これまで身体にあまり良いと思われていなかった非栄養素を、第七栄養素と称してバランスよく摂り過ぎないように摂取していくことが、長寿の一番大事なポイントであると大澤氏は述べられました。
 食物、栄養素摂取量とリスクとの関係について、どんな栄養素でも摂取を続けていけば病気のリスクが下がっていくというような物は世の中に無く、最初は効果があり途中で効かなくなる、また、大量に摂取すれば効くようになることはあまり考えられない、最初は効果があるが途中から病気になるケースが多く、摂り過ぎを抑え種類にも気を付けることが大事ですと説明されました。
 日経が“日本の未来を切り拓く”と題して4人の専門家について特集を掲載した中に、大澤氏がその1人として選ばれました。理由は、抗酸化食品について20年にわたってチョコレートココアの研究をされ、人の臨床研究で非常に良い結果が出たことによります。

 サプリメントについては、「体調、考え方、趣味ととらえ、機能まで考えて摂っていただきたい。あくまでもバランスのとれた食生活が大事です」とご自身の研究成果を元に説明されました。タマネギ、ブロッコリー、大豆、ゴマ等が重要な食品であることを述べられ、最近ではチョコレートに特に注目しておられる他、赤ワイン、アントシアニンを多く含んだベリー類も研究しておられるそうです。ゴマ学会を30年前に立ち上げられ、大澤氏はセサミノールの名づけ親でもあります。これまで、抗酸化物質について450種以上の物を研究された結果、とにかく組み合わせが重要と述べられました。
 体重当りの酸素消費量と寿命との関係について、酸素消費量の高いネズミなどの小動物は寿命が非常に短く、ゾウやカバの大動物は酸素消費量が低く寿命が長い、人は酸素消費量は低くはありませんが寿命が長い、その理由は血液中の抗酸化成分が多いからだそうです。八木國夫氏は「女性ホルモンに抗酸化性がある」と世界で初めて発表され、よって「女性の方が長生きである」のだそうです。
 「活性酸素は身体の錆を作る」とよく言われますが、活性酸素の「功」について説明してくださいました。抗菌・抗ウイルス作用、呼吸におけるエネルギー源、各種ホルモン類の合成、情報伝達(プロスタグランジン ホルモン)など、逆に活性酸素が無ければ生きていけませんと大澤氏。人間の受精の際にも活性酸素が必要とか。人間にとって必要な物であっても老化し、生活習慣病はほとんど酸化で発症すると言われていますし、抗酸化力は年齢と共に下降するそうです。
 10年前に、アンチ オキシダント ユニット研究会を立ち上げられたことについて説明されました。この研究会の基本的な考え方は、生体内の抗酸化機能維持がいかに重要かということを科学的なバイオマーカーで計測する、血液、尿、唾液などの中にある分子の多少で抗酸化力を科学的な根拠で測定することだそうです。大澤氏が開発された酸化ストレスのバイオマーカーでタンパク質や遺伝子が酸化によって変化することを測ると、酸化状態が分かります。大学発ベンチャー企業で20名以上の社員が、人や動物のバイオ細胞を使った評価システムの開発に取り組み、人の臨床研究をされ、人で効果があった抗酸化食品の開発をされています。

 65歳から認知症の発症率が一気に上がり、特に85歳以上は3〜4人に1人は認知症と言われています。寿命が延びたことにより、認知症の割合が増えたこともありますが、大澤氏は若年性の認知症が問題だと指摘されました。全体の50パーセントがアルツハイマーで、かつて多かった脳血管性認知症が現在は減る傾向にあり、逆にレビー小体型認知症が増えてきているそうです。「日本でも人はいずれかを発症するリスクを持っています。それを如何に先伸ばしできるか、疾病のリスクを如何に下げるかの予防医学だと思います」と大澤氏。
 神経変性疾患では、疾病特異的なタンパク質凝集体が認められます、と説明を続けられました。アルツハイマー患者の脳にあるβ―アミロイド、パーキンソン病のα―シメクレイン、舞踏病、プリオン病、ALS 筋萎縮性側索硬化症、いずれも脳の中にあるタンパク質が凝集していることより発症する、つまりタンパク質の酸化・還元のバランスが崩れて酸化してしまうことが原因とされているそうです。大澤氏はこの考え方を元にDHA(ドコサ ヘキサ エン酸)に着目されました。青い魚に多いDHAですが、脳にも非常に多く27%、目の網膜は60%がDHAとか。アルツハイマーの患者ではDHAが健常人の半分しか無いことにより、DHAが減少することがアルツハイマーの原因であるとする考え方が多かった20年前から、大澤氏は脳の中でもDHAが酸化されるのではないかという考え方を進めてこられました。
 DHAは非常に酸化されやすく、−20℃位でも酸化してしまい、冷凍庫の中で油で揚げた魚が空気に触れると酸化が一気に進むため、気を付けましょうと警告されました。老人ホームでアルツハイマーで亡くなった9人の脳のスライスを見たところ、DHAが酸化している部分とβ―アミロイドを持つ老人班とが完全に一致したとのこと。また、ショウジョウバエやネズミを使って脳の酸化を防ぐ物質を見つける研究を進め、大豆のイソフラボン、ウコン、レモン、ゴマ、チョコレートのポリフェノールアスタキサンチン等を挙げられています。発酵食品にも注目されていて、メリットを以下のようにまとめておられます。
 ・嗜好性の改善(味覚の改善、脱色、etc)
 ・抗酸化性の向上
 ・吸収率の改善、etc
 非栄養素と言われる成分にはえぐみがあり、おいしい成分ではないものも多いため、これを発酵という日本の伝統技術でおいしい食品にかえていけるのではないか、と大澤氏の話は続きます。テンペ(インドネシア発酵食品)、八丁味噌、発酵レモン果皮、発酵大豆イソフラボン、発酵ゴマ脱脂粕、カカオポリフェノール、コプリーノ(南部パラグアイで栽培の新しいキノコ)、テトラヒドロクルクミン、アスタキサンチン等は発酵食品です。これらの機能性を浜松フォトニクスが開発した機器により測定した結果、ポリフェノールの一種には抗酸化・抗炎症の作用があること、母乳に含まれているラクトフェリンは抗酸化性・抗炎症性を高めることが分かり、いずれも自然免疫の賦活作用が認められました。アントシアニンには抗炎症作用が認められ、ビタミンCは抗酸化性は強いけれども、抗炎症性はあまりないことが分かったそうです。
 浜松フォトニクスとヘルスケアシステムズ、愛知学院大学がコラボして、抗酸化物質の摂取前後で血液を調べ、身体の中で十分機能しているかどうかを測定できる機械を開発し、プロトタイプが出来上がりました。
 DHAについて、青みの魚を食べれば食べるほどいいのかどうか?大澤氏と大府の長寿研究所が研究発表されました。実は、青みの魚プラス発酵食品(愛知県の場合、八丁味噌)を多く食している人の方が推定IQが高かった、つまり、大豆がDHAの酸化を防ぐ抗酸化剤として働くことが分かったそうです。DHAのサプリメントの摂り方が重要と指摘されました。大豆はまた、女性ホルモン活性の力も持っているとのことです。
 大豆は肌にもいいのですが、骨粗鬆症、女性の乳がん、男性の前立腺がんの予防にも大いに関係があるそうで、大澤氏はヘルスケアシステムズと大豆がなぜ良いかを調べるエクオールというエストロゲン(女性ホルモン)活性のマーカーを開発されました。大豆は腸内細菌の働きでエクオールという物質にかわる、このことが大事で、エクオールに変えることができない人も多いとか。かつて日本人の50〜60%の人はエクオールを作ることができましたが、最近の女性は20〜30%しか作れないそうです。これまで、大豆をたくさん食べる日本人はエクオールを作る腸内細菌を持っているから大豆の効果大と言われて来ましたが、データが少なく大澤氏は自宅でエクオールを測ることができる「ソイチェック」という方法を開発されました。サプリメント大塚製薬から昨年発売されています。大豆を食べてもエクオールを作らない人は、更年期障害が多いそうです。

 大澤氏は3年ほど前からチョコレートの食べ方を調べておられます。スイス・ドイツでは年間12kg食べられているのに対し、日本人は2kg以下とか。カカオポリフェノールの研究では、筋肉、肝臓、肥満を抑える、血管をよくする、心臓、脳にも良い・・・たくさんの論文が出ているそうです。明治製菓と共同でカカオからたくさんの活性成分を分析し構造を決められた大澤氏は、実際に食べて試したいと考えられ、動脈硬化のモデル動物であるアポe欠損マウスで調べられました。結果、16週間で血管は詰まってしまいましたが、これにカカオポリフェノールを与えたところ抑制され、マウスレベルでは動脈硬化の予防になることを突き止められました。やはり、チョコレートはカロリーが高く肥満になるということで、30年前には健康によいという論文はほとんど無かったのですが、その後、大澤氏等が出された論文が引き金となり、アメリカ、ヨーロッパで研究が増えてきました。
 人での研究はパナマ近くの島に住むクナインディアンが都会に憧れてパナマシティに移り住んだところ、ガンを始めとする生活習慣病が急増したそうで、島に住んでいた時はカカオを食していたのに、都市に移り住んだ際には塩分摂取量が減ったにも関わらず血圧が高くなってしまった、その原因を突き止めてみたところ、カカオに関係があることが分かったそうです。チョコレートを食べていれば塩分を摂ってもよいということでは勿論ありません。日本人の場合、緑茶、コーヒー、赤ワインなどと一緒に毎日最低650mgのカカオポリフェノールを摂取することが望ましいという実証研究を立ち上げました、と大澤氏。120歳で亡くなったフランス人は、1週間に900gのチョコレートを、世界第3位の長寿の人の場合も、ほぼ毎日食べていたということから、愛知県蒲郡の市民を対象にチョコレートの人への研究をされました。蒲郡は愛知県で生活習慣病発症率が一番高かったことがその理由です。72%高カカオチョコレートを毎日25g4週間食してもらった結果、以下のことが証明できました。
 1.血圧が下がった
 2.HDLコレステロール値が有意に上昇した
 3.SF-36の精神的スコアで改善がみられた(精神的なストレスが排斥された)。
 4.BDNF(脳神経の栄養源)が有意に上昇した 
 5.摂取の前後で、体重・肥満度(BMI)に全く変化は認められなかった
 チョコレートの生活習慣病に関する実証研究の結果、正常血圧の人にはほとんど影響がなく、高血圧の人の場合は非常に有意に下がりました。140以上が高血圧と言われていますが、ほとんどの人は130以下に下がったそうです。悪玉コレステロールは、4週間では有意さは出ませんでしたが、善玉コレステロールは治験者全員が有意に上昇しました。
 次に、活性酸素による遺伝子の傷つきと炎症の度合いを尿で測る方法を開発されました。炎症が起きると心疾患のリスクが高くなります。炎症と遺伝子の酸化を防げばそのリスクは下がるはずです。「酸化されやすい人、運動のやり過ぎの人、年齢が高い人、睡眠が6時間以下の人など数値が高いのですが、高カカオチョコレートを適度に食することで血圧を下げたり動脈硬化のリスクを下げることができるということが言えます」と大澤氏。チョコレートの摂取を4週間続けますと精神的なストレスが緩和され、BDNF(脳神経の栄養源)が増えることが分かったそうです。BDNFはまた、脳活トレーニングや運動することによっても増えます。これまでBDNFについて報告されていた内容は以下の通りです。
 ・ニューロンの産出を促進させる脳にとって重要な栄養分
 ・海馬に高濃度で存在 
 ・65歳以上の高齢者では、加齢とともに減少
 ・血中に存在し、血液脳関門を通過
 ・うつ病アルツハイマー認知症などの精神疾患で脳内のBDNFが減少
 ・記憶・学習などに認知機能を促進
 ・運動によってBDNFは上昇
 大澤氏は、チョコレートを摂取することによりBDNFが上昇し、認知症予防の可能性がありますと結論を述べられました。
 最後に、ご自身が立ち上げられた(株)ヘルスケアシステムズ社について説明がありました。

 


閉会のご挨拶:豊田桃介氏 智の木協会 専門委員

 老化、認知症予防などアカデミックな内容を分かり易くお話いただいたことへの感謝を述べられました。一番の関心事は、その年齢でお元気で活動されておられる先生の普段の食事ですと述べられ、多くの方々が頷いておられました。
 次に、清水建設(株)が平成22年、大阪富国生命ビル建て替えに携わられたことが智の木協会との接点であり、その経緯を説明されました。以前のビルは地下に飲食店が、屋上にビアホールがあったそうです。その後、阪神淡路大震災があり耐震性の問題で建て替えが決まり、富国生命様はデザインをフランス人建築家のドミニク・ぺロー氏に依頼され、ペロー氏はこのビルを「いのち」とか「成長」という言葉をモチーフにし、森の大樹をイメージしてデザインされたと話されました。そして、曽根崎警察署、阪神百貨店側からビルを見上げていただくと、普通のビルが直方体に建てられているのに対し、裾の部分がスカートにように大樹が根を張るようになっていますし、窓もガタガタしていて下から見上げると反射して大樹の洞のように見え、まるで智の木協会の活動を象徴するようなビルになっていますと説明されました。
 最後に、平成20年に活動を始めた智の木協会の活動に対するご支援にお礼を述べられ、今後もお力添えをいただきたいとお願いされました。




交流会