智の木協会活動報告

智の木協会の活動報告ブログです

「第2回ヘレンドカフェ」(1月28日開催)のご報告

 智の木協会では、2018年10月15日に第1回「ヘレンドカフェ」を開催し、引き続いて2019年1月28日に第2回目を開催しました。
 折しもインフルエンザ大流行の時期で、欠席者が多かったのですが、小林代表幹事にヘレンド社訪問時のお話をしていただき、また、その際に同行してくださった方々のお話も伺い、ハンガリーへ旅行した気分になりました。
 参加者はケーキ工房フローレンスさんの、いちごたっぷり リッチなケーキ「マーガレット」と、「森をまもるコーヒー 竹炭焙煎珈琲」を里山倶楽部の中村仁美様に淹れていただき、優雅な一時を過ごしました。

 

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新年講演会(2月6日開催)のご報告

司会:智の木協会理事 大河内 基夫 氏

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開会のご挨拶:智の木協会 専門委員 掛川 敏幹

(富国生命保険相互会社 不動産部長)

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 景気・オリンピック・大阪万博等、多岐にわたってお話いただき、特に大阪万博との関連について、「大阪万博のテーマは“いのち輝く未来社会のデザイン”で、健康、医療、農業、食品などの分野がクローズアップされています。智の木協会は、植・食、健康をテーマに活動していますので、かなり親和性が高い集まり、組織だと思います」と述べられました。」
 また、「本日の講師、川西様につきましては、非常に関心の高いテーマで、しっかりお聞きしたい」と期待感を示されました。

 

講演:川西
(幸南食糧株式会社 取締役会長、「川塾」会長、智の木協会 企業会員)

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「ちょっとの気づきで企業も人も変われる

  -激動期における小さくても元気な一流企業の作り方-」

 

 川西氏は機会ある毎に「気づき」が大事であるとおっしゃっています。人はどんなに立派な訓示や助言を受けようとも、本人の「気づき」無くては変わりようがありません。当日、「気づき」その「きっかけと実践」について具体的にお話をしていただきました。
 「挨拶は一流企業の原点である」。こう言い切れることに辿り着かれた川西氏。どんなに会社を大きくしたいと思っても、そのために広報や営業を頑張っても、基本は何なのかに気づかなければ先へは進めません。川西氏は「社内挨拶ができない者は一流の挨拶はできない」また、清掃活動を通して「小さなことを一流にしていけば会社も一流になる」を信念に一日一人ゴミを2個拾う「一日2運動」を進めてきておられます。
 米問屋に就職された川西氏が厳しい仕事を乗り越えられたのは「小さくてもいい、何かをやってみたい、頑張って両親を楽にさせてやりたい」という思い、夢、目標を持っていたからこそと話されました。そして、目標とは「人生をデザインする道具」であると述べられました。どんな職業についても我慢すること、諦めないことが必要であると気付かれた川西氏は、苦労があっても苦労という言葉は使わず、努力という言葉をたくさん使うようにしてこられたそうです。努力する人は夢を語ると思う、とも述べられました。楽して成功するような魔法の方法はどの業界にも無いと思う、人の3倍成功したいなら3倍努力するしか仕方がないと思うとおっしゃいました。「みんな成功できるパスポートは必ず持っている、成功できるパスポートがあるから価値と魅力がある、しかし、成功という扉は自動ドアではない、努力した人しかその扉は開かなくなっている、努力した人は報われると思う、努力した人は嘘をつかないと思う」と続けられました。どの言葉にも説得力があります。
 8年後、独立された川西氏、追い風の時でも中小企業は危機感を持つ必要があるとおっしゃっています。「挨拶」が社運を左右することに出くわされたことが、大きな転換に繋がりました。大きな取引先からある日突然「取引をやめる」と宣言されたその理由が「お宅の社員は挨拶ができない、品物をぞんざいに扱う」という指摘に愕然とされた川西氏は、その時2つのことを学ばれたそうです。

①物のクレームから人のクレームの時代が来た。

②三割を占めるお客さんを顧客としてはいけない。

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 会社で川西氏は社員が挨拶ができなかったこと、品物の扱いについてなど社員を責めるのではなく「責任は自分にある」とした上で「朝も帰りも挨拶もできない集団が、お客さんの心に響く仕事・挨拶は無理だから、先ず、社内の挨拶を一流にしよう」と提案されました。社員から「売り上げに直結するのか?気恥ずかしい」などなどの発言に「当り前のことがこれだけ難しいのか・・・では、それをどこよりも素晴らしくやり遂げた時には、それが価値あるものになる、企業の魅力になる」と気づかれた川西氏。さっそく実践されました。1日目、2日目は何とか声が出ていましたが、3日目にはほとんど挨拶が無くなってしまったそうです。挨拶一ついかに難しいかが伺えます。川西氏は、何かを変えたい、何かを形にしたいというイメージを持つならば我慢が必要とおっしゃっています。
 そのうち、一緒に「社内挨拶」に取り組むと社員自から申し出があり、「社長、どうせ挨拶するんだったら握手してやろう」とも言われ、びっくり。理由を聞くと「握手すると相手の元気さと心のぬくもりを感じるから」と。次に彼は挨拶に「名前をつけましょう」と。それも「元気体温計挨拶」。結果三年半かかったそうですが、職場が元気になった、職場が明るくなった、職場のコミュニケーションが取りやすくなった、積極性が出てきた等々、といいとこずくめです。
 その後メディアからの取材の申し入れがあり、放映されるとその反響は予想以上で、新卒採用ができるようになった現在の社員の平均年齢は31歳だそうです。
 ご参考になれば、とお話になった言葉、「部下を変えようとするところに問題がある、自分が変わらなければ周りは変わらない」「名刺の肩書が大きくなればなる程、自分で気づくしかない。社員は気づいていても言わない」。
 また、社員が多くなれば各部署のリーダーが必要になってきますのでリーダー候補をつくり上げておられるそうですが、リーダー候補とは「挨拶の上にもう一言付け加えることができる人」だそうです。「選ばれる企業には、選ばれる人がいる」「これからの企業格差は、人で格差が付く時代を今迎えている」それぞれの言葉に重さを感じます。そして、川西氏は、身だしなみは一瞬にして「こんな人」と感じてもらいますので、非常に大切だと、本日、智の木協会でのご講演を意識して「緑のネクタイ」を結んでお越しくださいました。それに加えて出す声は企業の業績に比例すると思うとおっしゃいました。小さな声の企業は長持ちしないとも。
 挨拶は人の心をも変えます。「挨拶が一流」「きれいが一流」「元気が一流」、これらが一流の原点と言い切られる川西氏です。

Q.レジュメの「経営の三王」について質問がありました。

①危機を持ち続ける。
②存在・・・周辺でタクシーの運転手に聞かれても、誇りに思われるような会社をつくらないといけない。日本一美しい会社をつくろう!「美しい」会社は、最高のセールスマンの会社になる。「一日2運動(一人一日ゴミを2個拾う)」小さなことを一流にすれば、大きなことも一流になっていく。それを運転手が宣伝してくれる。
③責任・・・リーダーは「私の責任です」と言えること。

 川西氏は、「関西発仕事コンソーシアム~“夢”やってみなはれ勉強会~」の会長も務めておられます。
 最後に、「社団」テラプロジェクト理事長、智の木協会代表幹事 小林昭雄氏より、“夢”やってみなはれ勉強会発足の経緯についての説明がありました。



交流会

 交流会は場所を移動して、「社団」テラプロジェクトと合同で行いました。いろいろな分野の方々にご参加いただき、新しい出会いもたくさんあったことと思います。

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2018-10-15 「第1回スイーツマルシェ/ヘレンドカフェ」のご報告

 智の木協会は、テラプロジェクトの事業展開に協賛し、2017年5月のハンガリーヘレンド社訪問を機として、同社製、「アポニーグリーン」カップ&ソーサ―に“MIDORI−SANTA”One Greenロゴを200客限定で刻印していただくことができました。



 ヘレンド社は、磁器製造で使うエネルギーをみどり化活動でオフセットすべきとの企業哲学をもっておられ、地球温暖化解消、都市緑化、植育活動の普及に理解を示してくださり、夢のような企画が実現しました。

 智の木協会では、このカップ&ソーサ―をご購入いただいた皆様やご購入予定の方々、会員の方々を対象に、第1回ヘレンドカフェを開催しました。







2018-8-7 「スロバキア ワインの夕べ」ご報告

ご挨拶:智の木協会代表幹事 小林昭雄氏


 智の木協会とスロバキアワインとの接点について、「2年前に(株)マイティ(智の木協会企業会員)の鈴木会長様とお会いし、スロバキアを訪れる機会をいただきました。(株)マイティ様は、スロバキアワインを輸入しておられますので、ワイナリーへもご案内いただき、世界中のワイン生産国の中では小規模ですが、非常に質の良いワインを生産していることを知り、この度、試飲していただく機会を設けることにしました」と感謝の意を表されました。









講師:スロバキア ワイン アンバサダー 大野 春美 氏


 まず、スロバキアの位置を説明していただきました。スロバキアと聞けば日本人の多くが「ああ、チェコスロバキアね」と言いますが、1993年1月に分離独立してスロバキアになりました。北西にチェコ、北にポーランド、東にウクライナ、南にハンガリー、南西にオーストリアと多くの国に接している中央ヨーロッパの国です。
































 大野氏によりますと、スロバキアはブドウ生産の北限と言われていて、非常に冷涼な地でピュアな味わいが生まれるそうです。ブドウの種類から圧倒的に白ワインの生産量が多いそうですが、その中から以下の4種類を試飲用に選んでいただきました。


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1.スパークリング:セクト・パルフィ・ブリュット

  力強い泡とキレのある味わいとやわらかなコクがあり、

  シャンパーニュのような満足感。

  ワイナリー:ヴィーニョ・ニトラ

2.白:ヤグネット ミュラー・トウルガ

  フレッシュなインパクトで、すっきり爽快な味わいの中に、

  瑞々しい果実味が感じられるコスパ抜群のワイン。

  ワイナリー:カルパッカ・ペルラ

3.白:MS ヴェルトリンスケ・ゼレネ

  スロバキアで一番多く作られる代表品種。

  爽やかな風味とコクのある味わいを併せ持ち、綺麗な後味。

  和食にもよく合う。

  ワイナリー:ムルヴァ・スタンコ

4.赤:Ex フランコフカ・モドラ

  スロバキアを代表する品種。マリアテレジアが愛した

  “ラチャ産”フランコフカ。果実味と成就感のバランスが良い。

  ワイナリー:ヴィラ・ヴィーノ・ラチャ





 軽食としては、フランスパンのバケット、スパークリングにはオレンジを、白と赤ワインには3種類のチーズを合わせました。他には塩豚、ウィーンからソーセージの差し入れ等々、楽しく学んでおいしさ満喫のセミナーでした。

 セミナーでの試飲の他、試飲販売コーナーも設けていただき、参加者の皆様に大変喜んでいただきました。次回の開催を望む声が多く聞かれました。





2018-5-12 創立記念講演会・交流会のご報告

2018年創立記念講演会(10周年)





開会のご挨拶:智の木協会専門委員 豊田 桃介 氏 (清水建設株式会社 開発営業部長)


 智の木協会が富国生命ビル4階に入居以来格別のご支援をいただいている清水建設(株)の豊田桃介氏より、富国生命ビル建築の原点となりました「大樹をイメージして」の思いを建築会社の立場からお話いただきました。ビル建設の専門家でありますが、清水建設(株)様は、ただ単にビルを建てるのではなく、その中で事業・活動していく人たちの思いをも汲んで、同じ思いを背負い、その後の私どもの活動にも積極的に関わり支援してくださっています。

 創立11年目をスタートさせた智の木協会に力強いエールをいただきました。












 創立10周年をお祝いし、乾杯のご挨拶を田中 一夫 氏 智の木協会企業会員(アマゾンカムカム株式会社代表取締役)よりいただきました。



























 株式会社マイティ代表取締役会長 鈴木 雅也 氏(智の木協会企業会員)より、スロバキアワイン(FRANKOVKA MODRA)をご提供いただきました。続いて、片桐 新之介 氏よりワインの説明がありました。



























智の木協会11年目に向けて:智の木協会代表幹事 小林 昭雄 氏


 昨年、「社団」テラプロジェクトは、うめきたガーデンで「みどりのサンタフェスタ」を行いましたが、今年も引き続き行う旨 報告されました。

 「植育」ボックス等、植育という名を掲げて活動していますが、「植育」とは、智の木協会創立時からの言葉で、9月1日から各種シンポジウムなどを開催予定で、昨年の写真を紹介しながら予定を発表されました。うめきたは来年度から本格的な工事がスタートしますので、今年が最終年度、今後この催しの場所も考える必要がありますので、皆様の知恵をいただきたいとお願いされました。

 「植育」については、泉大津市の市長からも実践の場としてとの申し出がきています、と代表幹事。「この富国生命ビルは、都市の中にある1本の樹として地下へ行きますと“いのちの森”と名付けられていますが、そういう意味で“みどり”をビルから大阪へ、大阪から関西へ、関西から日本中にメッセージを送り出したいと考えています」と今後の目標について語られました。また、ハンガリーのヘレンド社との共通理念「地球温暖化防止」活動を念頭に、智の木協会の進化発展に努力していきたい旨のお話があり、ぜひとも皆様のご支援をお願いしたいと述べられました。




講演:関西学院大学 専門職大学院 経営戦略研究科 教授 池田 新介 氏


   (大阪大学社会経済研究所 教授 歴任)

 「自制心で人生が決まる?!−行動経済学の視点」

 行動経済学とはどんな内容なのか?難解ではと想像していましたが、池田氏の軽妙な話術でどんどん引き込まれていきました。本日は、以下についてお話いただきました。

 1.自制心で決まる!?

 2.自制心かIQか?

  (ア)3.自制とは何か?

  (イ)4.自制力を決めるもの

  (ウ)5.自制のスキル










1.自制心で決まる!?

 4才児を対象に「マシュマロ・テスト」と呼ばれる実験をした結果についての説明がありました。マシュマロを1つ、目の前に置いておき「先生がいない間に食べてもいいけれど、もし先生が戻るまで食べないで我慢していたらもう1つあげます」というセルフコントロール力を測るテストで、個人差はありますが我慢できた平均時間は6分だったそうです。

 この対象者だった子どもたちに15年後に追跡調査を行った結果、学力(大学進学適正テスト)、問題解決能力、ストレスへの対応について、マシュマロを我慢できた子ほど高いパフォーマンスで、更にその15年後、肥満度を計測したところ、マシュマロを我慢できた子ほど肥満度が低いという結果が出たそうです。自制心とは子どもの時から備わっているもので、その後の人生にそこまで影響を与えるものなのかと、この年齢になっていては如何ともしがたいのですが、興味を覚えました。

 新生児1000人を対象に行った生後30年の不健康調査(ニュージーランド)では、子ども時代のセルフコントロール能力が高いほど健康であるとの結果が、また、日本で約3700人を対象に池田氏が調査された場合では、自制力が低いほど「太っている」「依存性が高まる」「物事の処理を後回しにする」「借金をする傾向が高い」となっています。富裕度、社会的地位についても子ども時代のセルフコントロール能力が高いほど「社会的地位」「所得」「財務計画性」が高いという結果が出ています。

 次に大人版マシュマロ・テストについて説明していただきました。1年後に10,000円受け取る、1年と1週間後に10,200円受け取る、この場合、後者を選ぶ人が多いのですが、今日10,000円受け取る、1週間後10,200円受け取るの質問になると、途端に今日受け取るを選択する人が多くなるそうです。1年先のことは辛抱強く待てるのに、直近のことが待てない、このことを経済学では「現在バイアス」と言い、「現在バイアス」によって自制心を測るのだそうです。現在バイアスの有無や程度によって自制心を測ってみると、やはり、喫煙習慣、肥満の確率、借金の有無などにはっきり差が出てくるそうで、自制心は私たちの行動パフォーマンスに強い影響を与えています、と池田氏



2.自制心かIQか?


 自制心も大事ですが頭の良さも大事だろうと思う方に、次のようなデータを示されました。自制力5階層✕出身大学偏差値で調査した結果、依存消費傾向には自制心が動いている、家計所得にはIQが効いている、過剰負債傾向も重度肥満傾向も自制心が決めている、との傾向が出たそうです。予想外に自制心に左右されることが多いようです。

 生後30年の追跡調査(ニュージーランド)で、所得、社会的地位、健康、依存消費、犯罪歴について調べたところ、所得と社会的地位については認知能力と相関があるとの結果が、健康と依存消費については自制力と相関がある、犯罪歴についてはIQが高いからといって犯罪を起こさないとは限らず、自制力が大いに関係しているとの結果が出たそうです。子ども時代にきちんとしておけば犯罪は起こさない、「子どもの幸福を考えると、子どもに持ってほしいものはやはり自制心ですね」と池田氏。参加者全員納得しました。



3.自制とは何か?
 脳の中身を考えることは非常に興味深いことです。脳の深い部分は大脳辺縁系(旧脳)と呼ばれ、感情的な処理を行い、前頭葉頭頂葉(新脳)は理性的な処理を行うそうです。池田氏は「自制とは、理性脳が感情脳をどのように処理するかという問題で、理性脳が勝てば問題無いのですが、実際には理性脳は疲れやすく自制心は限られていますのでバランスが重要です」と話されました。



4.自制力を決めるもの


 「年の功」という言葉がありますが、経験値が上がっていくと男女共に自制力が上がっていき、また、男女では、女性の方がどの年齢でも自制力が高いと説明されました。

 脳機能には個体差がありますが、マシュマロを待てなかった子どもは大脳辺縁系の働きが前頭葉の働きに比較して活発であり、現在バイアスの強い人も同じだそうです。自制力はストレスとも関係があり、ストレスが高じると自制できなくなるという結果が出ているそうです。

 また、子ども時代に逆境や貧困家庭で育った場合は、喫煙・不健康・経済的困窮の確率が高く学歴が低いなどがあり、大人になってからのセルフコントロールに大きな影響を与えます。脳にも影響を与えることが知られていて、非常に深刻だそうです。米黒人の青少年における調査で、貧しくても頑張れば「レジリアンス高、うつ・攻撃性小、物質依存少」になることができますが、しかし、セルフコントロールが高い人ほど疾病率が高い、生体の加齢速度が高いという結果が出ているそうです。貧困家庭に育った人は頑張れば社会的な階層を上げることができますが、自制能力が高い程早く歳をとり、貧困・逆境では自制は命を削る部分があります、と池田氏

 自制は辛いものですが、人によっては必ずしも辛くない、それは「自制のベースライン」があるからで、「ここまでは当たり前」というベースラインまでの頑張りではあまり消耗しませんが、ベースライン以上の頑張りでは消耗が早いということですので、ベースラインをいかに上げていくかということが課題です。

 自制のベースラインを決める物には、下記のような項目があると説明していただきました。




 ・過去の習慣

 ・将来目標からの内発的動機付け

 ・家族や友人からの影響

 ・文化・社会規範、計画への織り込み

 ・マインド・セット(信念・心の持ち方)



 マインドセットには2種類あり、才能とは固定的なものであると信じる人たちと、才能とは努力によって向上するものと考える人たちに分かれるそうです。池田氏は参加者全員に挙手によって仕分けられましたが、圧倒的に努力マインドセット型の人が多かったことは智の木協会構成員の特徴ではないかとおっしゃいました。



5.自制のスキル

 先天的な部分もありますが、スキルもあります、と池田氏はヒントを説明されました。

  • ヒント1:自分に自制心が無いことを自覚すること、自分を知ることが大事。「真剣に勝負すると負けるかも知れないので、自分をごまかす」(セルフ・スクラッピング)タイプの人は要注意だとか。
  • ヒント2:誘惑(マシュマロ)を見る技術→子どもは、マシュマロが目の前に無ければ待てる、待っている間に気をそらせることをやらせる、絵本を読ませる、歌を歌わせる、マシュマロを客観視できるようにする(成分、色など)。何もしなくても自分で気をそらせることができる子どももいるし、あとから習得することもできる。
  • 機会費用をはっきりさせると、目先のことに捕らわれず、1か月後に得をする方を選ぶようになる。
  • ヒント3:自制のベースラインを高める→意志力や才能について「努力マインドセット」を育てる教育が大事。家庭教育が絡んでおり、厳しい要求をしても協力を惜しまない教育(支援的)をすると努力マインドセットが育つ。
  • ヒント4:意志力を鍛える→自制心や根気がいることを続けることによって鍛えられる。意志力を鍛錬すると、食習慣、生活、仕事全てで自制力がアップする。
  • ヒント5:苦痛の経験→克服できる苦痛と克服できない苦痛がある。克服できる苦痛を与えて、自己高揚感を味わえるように学習させることが大事。



質疑応答


 講演終了後、「自制」とは大変興味深い事柄で、たくさんの質問が出されましたが、その中から特に参加者の関心のある質問について記します。



Q:大阪にIRを作り、カジノを作る計画があります。ギャンブルで身を崩す人がたくさんいるので、ある程度の制限は仕方ないと思う部分と、自制心は個人の問題なので、と思う部分がありますが、このことについて・・・

A:経済は自由主義的な考え方が底流にあり、我々が何をしようと自由です。それが担保されているのが自由主義です。自由選択の余地を残しながら人々の選択の質を高めていこうという公共政策の考え方が大勢を占めています。カジノへ行くのは勝手、知らず知らずのうちにカジノへ行く回数がうまく制約されていくような、そのようなカジノを作ろうということがあります。身を滅ぼしそうな人程カジノへ行かなくなるようなやり方・作り方があります。人々の選択肢を制約することなく、人々の行動の質を高めていくことができます。

Q:進化するにつれて前頭葉が発達し、自制心が生まれるのではないかと思いますが、いかがでしょうか?動物は自制心があるのか無いのか、生きるためにそのような行動をとるのか、一番おいしいものから、栄養価の高いものから食べますね。前頭葉との関係は?

A:猿でリサーチした例があります。虫を食べる猿と草を食べる猿がいますが、虫を食べる猿は「待てない」のです。なぜなら、虫は食べないと逃げてしまうから。報酬(餌)の形と我々の進化の関係から、前頭葉が発達してきています。






お土産
 今回は、(株)上蓮製麺様の「Caroday」4種類(ホウレンソウ、ニンジン、トマト、カボチャ)のうち2種類をお土産にお持ち帰りいただきました。

 代表取締役社長の山田繁雄氏(智の木協会企業会員 高野化成工業株会社)より、「Caroday」について、説明していただきました。


















閉会のご挨拶:株式会社 マイティ 代表取締役会長 鈴木 雅也 氏

 「この協会は、シンポジウムのような少し固い企画もあれば“みどりのサンタフェスタ”のような楽しいイベントもあり、小林先生の企画は我々ビジネスマン以上の企画力とスタッフの方々の努力がすばらしいな、と感じています」とお話くださいました。

 また、「20周年を目指して進化していくためには、我々会員・企業がもっともっとイベントに参加して協力していくことが大事だと思います」と参加者の方々にお願いされました。

第12回グリーンツーリズム 「大山崎の“聴竹居”見学会」レポート

 昨年(平成29年)、大山崎に「聴竹居」という歴史的にも建築学的にも非常に意味のある建物があるので、ぜひ見学会をとの助言を得、会員の皆様に呼びかけて4月15日(日)に実施しました。

 当日の朝は雨でしたが、見学時間の午後になりますとすっかり止みました。新緑の素晴らしい季節、参加者の皆さんは集合時間よりも早くに現地に赴かれ、周辺を散策されていました。

 「聴竹居」は、大正から昭和にかけて活躍した建築家、藤井厚二氏(京都帝国大学工学部建築学科教授を歴任)が、環境工学を意識して設計し、「真に日本の気候・風土に合い、日本人の身体に適した住宅」を目指して自邸として建てられたものです。実験住宅として建てるにつき、大山崎の地に1万2千坪の土地を買い求め、実験すること4回、現存する聴竹居は実に5回目の住宅だそうです。現在は(一社)聴竹居倶楽部が管理運営されており、私どもは倶楽部の事務局長、田邊均様にご案内いただきました。

























 まず外観からの庭で目に付いたのは若葉が芽吹いた黄緑色のモミジで、ちょうど、縁側のみどりのカーテン役になっており、夏の強い日差しを遮る役目もしているそうです。秋には周辺のドウダンツツジアセビと共に鮮やかな色彩に彩られ、やがて太陽の日差しが欲しい頃には辺りはモミジの絨毯と変貌します。植物は意図的に植えられているのです。南面は、現在こそ治水工事と堤の桜が大きく育ったため、展望できませんが、三川(木津川、宇治川桂川)が合流して淀川となる地点でもありますので、藤井氏がこの場所を決めた際には眼下に雄大な風景が広がっていたようです。

 いよいよ室内の案内です。最初に通された部屋が居室、リビングルームです。全ての部屋がリビングに面していて、床は現代風のフローリング、正面には一段あがって(30 cm)畳の間(小上がり)があり、見学者はそこに腰かけて説明を聞くことになりました。畳の間への段差は椅子の役割も担っており、椅子と畳を共存させた和風モダン住宅です。


























 田邊様から「築90年、基本的にはどこも修理していません」と説明があり、阪神大震災もありましたのにとにわかには信じられませんでした。藤井氏は部屋に家具を並べることを避け、コーナーに造りつけました。それらは家具兼火打ちで、建物の強度を増す役割をしているそうです。仏壇や神棚などは全て収納タイプでした。夏の蒸し暑さ対策に注力した試み、着想の素晴らしさを汲み取ることができました。その1として、畳の間の下に室内に西風の取り込み口を設置し、地中で冷やされた土管を通り抜けることで暑い空気を冷やす自然の冷却効果を狙った工夫が見受けられました。


























 その2として、「名塩和紙」を使用した和紙天井でした。和紙は、空気が通り湿気も吸い取ります。また縁側は網代天井で、自然に空気が循環します。照明にも工夫が凝らされ、反射板を最大限に利用して下だけではなく横も照らしていました。

 室内は直線と丸、幾何学模様等を取り入れたデザインで、藤井氏はスコットランドの家具のデザインでも有名な建築家のマッキントッシュの影響を受けていたそうです。

 縁側は柱が見当たらない構造ですが、未だに水平が保たれているそうです。90年間歪むことなく建っている理由は、窓枠が柱の役割を担っていること、コーナーに造り付けの花台兼火打ちで補強してあるということでした。窓ガラスも一度も交換されておらず、窓枠など、隙間風が入ったりするものですが、全く狂いがありませんとのこと。縁側に夏は日差しを避けたい、冬は中に入れたいという矛盾した考えを両立させるために桔木(はねぎ)で支え屋根の軒先の出を調節してありました。ガラスは上部がすりガラスで無枠の軒裏が見えないように計算されています。この縁側、西からの風で夏はさぞかし心地よい場所だったことでしょう。


























 ダイニングルームとキッチンの構造に、女性たちは「こんなキッチンが欲しかった!」と口々に話していました。ダイニングからはリビングの様子あるいは子ども部屋の様子が全て分かるように設計されていましたし、キッチンは3歩歩けば流し台、3歩歩けば食器棚・・・無駄な動きなしに仕事ができる仕組みになっていました。そして、最大の関心事は、カウンターキッチン。引き戸を開けてキッチンからダイニングルームへ料理を渡せることでした。調味料も双方から取ることができます。食器棚の棚板も上から順番に幅が広くなるように作ってあり、開いたらどこにどんな食器があるか分かるように設計してありました。藤井氏は、女性の立場にたった建築デザインをされた方です。当時の女性は和装でしたので、袖のことまで考えたデザインでした。今後、家の新築、リフォームを考えておられる方々には大変参考になります。既製の物が当たり前ではなく、使い勝手のよい家具や動きの動線を考える上で、大変勉強になりました。

 その他、電気冷蔵庫、床下収納庫、水洗トイレ、給湯式お風呂、オール電化などなど、現在の私たちの生活とあまり変わらない設備で羨ましい限りです。

 空気の通り抜けが素晴らしい反面、冬の寒さ対策が大変かなと思いました。4月も半ばでしたが、室内はずっと暖房をつけっぱなしでした。もちろん電気で。電気代が現在の金額で約20万円/月かかっていたそうですので、奥様から苦情が出ていたかも知れませんね。

 藤井氏は茶道や華道にも精通していたとかで、聴竹居とは、藤井氏の雅号だと田邊氏よりお聞きしました。聴竹居は2016年より(株)竹中工務店が所有していますが、維持・管理・運営などは(一社)聴竹居倶楽部が担当しておられます。その方々は実は地域の方々、近隣の方々で、この運営方法を次世代へも繋いでいこうとしておられます。田邊様の聴竹居に対する思いは熱く、時間を忘れて丁寧に説明してくださいました。本当にありがとうございました。参加者全員、感動いたしました。次は、季節をずらして再度見学させていただきたいと思いました。



第10回 智の木協会シンポジウム(創立10周年記念)レポート

 ・日時:平成29年10 月31日(火)

 ・会場:大阪富国生命ビル4階 「社団」テラプロジェクトAゾーン



司会:智の木協会 主幹 加藤 久明 氏



開会のご挨拶:智の木協会 特別顧問 山本 幹男 氏

 智の木協会創立10周年記念シンポジウムに当たり、富国生命保険相互会社の建物のコンセプトについて「フランス人建築家ドミニク・ペロー氏が大樹をイメージしてデザインされましたが、このコンセプトは小林先生の思いと共通しています」と話されました。ちなみにペロー氏は、2015年に第27回高松宮殿下記念世界文化賞を受賞されています(建築部門)。
 ビルの建て替えに際して、富国生命様は「いかに地域の皆様に親しまれお役に立つビルにするか」といろいろ検討された結果、地下にアトリウムや防災センターを造られました。そして、智の木協会はこの建物の中の「コア」との位置づけであると述べられました。4階のスペースは、智の木協会はじめ対象とする世代は子どもからシニアまで、事業は食品、緑化等様々な分野に亘っていること、植と食それに健康をテーマとして様々な団体・企業に参画いただき、企業と消費者あるいは大学と消費者、大学と企業というような形で、産学民連携して多岐にわたるプラスになる情報を発信し活動していることを丁寧に説明してくださいました。そして、全て小林先生が中心になって展開しておられます、と付け加えられました。
 シンポジウムやワークショップでは、これまでお香、竹細工、煎茶、お酒、智の木協会に参画いただいている企業や団体など、講師は多方面からお招きしていることをお伝えされ、本日の伊太祁曽神社禰宜 奥重貴氏のご講演が非常に楽しみですと期待感を示されました。伊太祁曽神社は日本書記に記される「五十猛命(いたけるのみこと)」(木の神様として親しまれている)をお祀りしていますので、智の木協会創立10周年記念に最もふさわしいご講演だと思いますとお話になりました。
 「10年は一つの区切りです。いかに皆様のお役に立てるか、これを原点に一段と努力して参りますので、引き続き皆様のご支援を」とお願いされました。そして、最後に「参加者の皆さまのご健勝とご多幸をお祈りいたします」と締めくくられました。





智の木協会平成29年度活動と『うめきた「植・食、健康」フェスタ』の説明:

智の木協会 代表幹事 小林 昭雄 氏


 智の木協会は2008年5月4日に創立されましたが、その後5月4日は「みどりの日」に制定されました。小林氏は、最近みどり化活動は天命かなと思うようになられたそうですが、ネコ駅長を仕立てて和歌山電鐵を日本一有名にされた両備ホールディングス(株)の小嶋会長から「先生はみどり化、みどり化と言っているが、伊太祁曽神社には太古の昔からみどり化を進めた神様を祀ってあるんですよ」と指摘されたそうです。本日、伊太祁曽神社禰宜 奥氏にご講演いただくことになり、智の木協会の理念はまさに五十猛命(いたけるのみこと)と同じだったということが分かり、そのご縁の深さを感じていますと述べられました。
 創立10年目の節目、事務局がパンフレットを刷新した旨述べられ、パンフレットには取り組む事例などが書かれていて、智の木協会のバイブル的な存在ですのでぜひ目を通して下さり、指針をいただきたいと話されました。事例の2番目のホームページについて、小林氏は「いろいろな情報が盛り込まれていますことから、優良サイトの一つと評価されています。智の木協会は先見性のある企画を10年前に行っているんですよ」と説明されました。
 2017年12月1日(金)〜9日(土)まで、「社団」テラプロジェクトが行うイベントの説明の中で、一番上に「植育イベント」と書かれていることについて、「植育」という言葉は実は智の木協会が最初に提案した言葉だと自負しています、と話されました。
「植育」は既に存在しますという人がありますので、その意味を尋ねますと「植物に関する教育」と言われますが、実は「植育」はもっと奥が深いのです。その定義を以下のようであると説明されました。

  1. 種を播き育てる喜び。
  2. 果実などを収穫する喜び。
  3. 収穫物を分かち合う喜び。
  4. 収穫物を愛で食する喜び。

 「植育」から「食育」へと、小林氏は「植・食、健康」を当初からイメージしていましたので、非常に整合性があると思いますと述べられました。智の木協会の位置づけは、「社団」テラプロジェクトを動かすいろいろなアイディアをいただく知恵を持った人たちが集まっている組織ですと明言されました。都市の中を智の木協会の木で埋めていこうということで、「One Green Project」を推進していて、公道にもOne Green Boxに入れた樹木をみどりのサンタが置いていくという形にしています、そして、植物の育成方法は、テラプロジェクトが開発した新しい水耕栽培システムであり、その展開は評価の高いビジネスモデルであると説明されました。
 12月1日から9日までの「植・食、健康」フェスタのシンポジウムについて、「12月1日は本日の講師、奥重貴氏にもお越しいただき特別対談を行います」とご案内されました。シンポジウムは以下の予定です。

  • 12月1日(金):オープニングシンポジウム「みどり」に込めた次世代へのメッセージ。
  • 12月4日(月):(一社)地域創生連携活動コンソーシアム
  • 「木材から木質化によるイノベーション
  • 12月5日(火):アンチエイジング&スーパーフード「健康に華麗に生きる!」
  • 12月6日(水):都市における建築とみどり その効果と効能
  • 12月6日(水):公園を活かし、公園と生きる
  • 12月9日(土):対談。羽根田選手(カヌー)とモンベル会長 辰野氏、小林代表幹事(テラプロジェクト理事長)(会場:うめきたガーデン)

  • 5月、ハンガリーヘレンド社を訪問、市販品のカップ&ソーサ―「アポニーグリーン」に「MIDORI-SANTA」の文字を入れていただけることが決定。200客限定。日本の企業には無い意識の高さを実感。販売の一部は智の木協会に寄付される。
  • 8月、智の木協会企業会員の、両備ホールディングス(株)様に、岡山高島屋屋上に「みどりのサンタガーデン」を作っていただいた。ロゴマークデザインは、九州観光客車を設計された水戸岡氏によるもの。
  • One Greenの切手ができた。智の木協会のトレードマーク「植育」の文字が入っている。

  • みどりのサンタのぬり絵を作る準備をしている。

 大阪富国生命様のビルが「いのちの森」として生まれ変わり、ここからみどりの情報が関西に、日本全体に世界に発信されていくことを熱望しており、この先10年を見据えて活動を進めていきたいと思っておりますので、今後ともご支援いただきたい旨お願いされました。





講演 伊太祁曽(いたきそ)神社 禰宜 奥 重貴 氏
タイトル:「木の国、こんにちは〜木の神様のお話〜」

座長:智の木協会 代表幹事 小林 昭雄 氏

 座長から講師の奥重貴氏について、若くて意欲に燃えた方であると紹介がありました。
 伊太祁曽神社は、和歌山電鐵伊太祈曽(いだきそ)駅から徒歩5分程のところに位置しています。たま駅長で有名な和歌山電鐵の「ニタマ駅長」が、「たま駅長」の後任として貴志川駅に赴任するまで「ニタマ」は伊太祈曽駅の駅長でした。
 猫のたまを駅長として象徴的な位置において、廃線の憂き目に遭っていた貴志川線を復活に導かれた両備ホールディングス(株)の小嶋会長様には、平成26年7月16日第7回シンポジウムでご講演いただきました。その際に、貴志川線の復活について、最大のポイントは「沿線住民の方々の残したいという熱い思い」だというお話がありました。この度、活動の中心に伊太祁曽神社宮司禰宜の奥氏がおられたということで、そこに小嶋氏と奥氏との接点があったことが分かりました。
 元々、沿線には7キロ位の間に伊太祁曽神社、竈山(かまやま)神社、日前(ひのくま)神宮・国懸(くにかかす)神宮の3つの大きな神社があり、その3つの神社を結ぶために山東軽便鉄道が引かれていたそうですので、廃線にするわけにはいかないとの思いが強かったということでした。
 伊太祁曽神社に“木の神”「五十猛命」が祀られていることについて、日本書記に記されているとして以下のように説明されました。「五十猛命素戔嗚命(すさのおのみこと)の子どもで、素戔嗚尊命が高天原から追放された際に一緒に出雲国に降りてきました。木が一本も生えていない地上を見て、素戔嗚尊命は自身の体毛を抜いて檜や杉(建物に)、樟(造船に)を創りました。そして、五十猛命に命じて木種を植えて廻らせました。五十猛命は二人の妹、大屋津姫命(おおやつひめのみこと)、都麻津姫命(つまつひめのみこと)と共に筑紫国から植樹を始め、最後に紀伊国に鎮まりました。この神話から五十猛命は“木の神”まさに「植樹の神様」で、智の木協会の理念と一致します。この地は木の神の鎮まる場所の意で「木の国」と呼ばれるようになり、やがて奈良時代に国名を漢字二文字で表すようにとの方針で「紀伊国」と呼び名が変わっていきました。」
 伊太祁曽神社では、以上のお話を分かり易くした「木の国こんにちは」という絵本を作成し販売しておられます。
 次に「イタテ神を祀る式内社」について説明していただきました。式内社とは、平安時代中期に編纂された延喜式という書物の巻9・巻10の神名帳に載っている社神のことだそうです。神名帳には、3132座(神様はお座りになりますので)、神社の数では2861社が朝廷から祭祀に際して幣帛(へいはく)を受け取る神社として記されているとか。イタテ神を祀る神社は15社、その漢字を見ますと共通点があり、その中に伊太祁曽神社も含まれています、と奥氏。紀伊国式内社は、31座28社が記されていますが、31座中6座が植樹神、式内社の中にはランクがあり、大社と小社があり、大社14社中4社が植樹神だそうです。
















 次に、伊都郡海草郡、那賀郡、在田郡、牟婁郡の神社について、伊太祁曽神社海草郡にあり、海草郡には日前・国懸神宮(ひのくま・くにかかす。現在は一つの神宮になっています)、大屋都比賣神社、都麻津比賣を祀ってある高積比古(たかつみひこ)神社と高積比賣(たかつみひめ)神社、鳴(なる)神社、そして五十猛命を祀ってある伊達神社などがあることをお話になりました。アンダーラインの神社は、名神大社であり、月次祭(つきなみさい)、相嘗祭(あいなめさい)、新嘗祭(にいなめさい)を行う一番格の高い神社とのことです。ちなみに、世界遺産に登録されている熊野早玉神社は大社ではありますが名神社ではなく、熊野坐(くまのにます)神社は名神社ですが月次祭新嘗祭をやりなさいと書かれていない、また、熊野那智大社は、そもそも延喜式内社でもありませんと説明されました。
 五十猛命を祀る神社は全国に約300社あると言われており、その総本宮的な位置付けが伊太祁曽神社ですが、伊太祁曽神社という名の神社は少なく、イタテ、熊野神社杉山神社などの名前がついている神社と、他に主祭神ではなく境内に末社として祀っている神社とを含めて300社ということだそうです。
 伊太祁曽神社は、根来寺豊臣秀吉が戦ったことにより全て焼き尽くされて安土桃山時代以前のものは何も残っていませんが、約二千年前は現在の場所より北西に位置していて、五十猛命が祀られていたという記録が日前・国懸神社に残っているとのことです。伊太祁曽神社は格の高い神社であることを証明する「官幣社」に選ばれていて、天皇から玉串料をいただかれ、「幣饌料(へいせんりょう=幣帛料と神饌料を合わせた金幣)」を数々いただいています、と奥氏。また、植樹祭で天皇皇后両陛下が和歌山へお越しになった際にも「和歌山へ来ましたよ」という印として「幣饌料」をいただかれたそうです。幣帛料は、神社の建て替え時や特別なお祭り(100年毎)の時に神社本庁に申し出ていただくもので、伊太祁曽神社は、最近では、平成14年10月に1300年祭(創建が分からず、702年を一つの節目にしています)と、平成25年に社殿の屋根の葺き替え時にいただかれたそうです。



伊太祁曽神社の主な祭り〉

1.木祭。毎年4月第1日曜日開催。建築、造船、炊事、製鉄用の火力等々として使われてきた木に感謝する。CO2をO2に変える、木は大きな役割を担っている。植樹することでそれが成し遂げられる。環境問題で、木が大事であると気付いた人たちがお参りに来る。お祭りの後、植樹祭をする。餅まきで400キロの餅をまく。チェンソーカービング実演。城所啓二さんが翌年の干支を奉納する。一回りして全ての干支が揃っている今は、以前の干支のリメイクを行っている。平成30年4月1日、木祭では、イノシシがリメークされた。
2.茅輪(ちのわ)祭。7月30日、31日。大国主の命を助けたのが伊太祁曽神社の神様だったことが、古事記に載っている。そこから伊太祁曽神社は「厄難除命神様」とも言われている。それを絵本にしたのが「いそげ、いそげ、木の国へ」(伊太祁曽神社出版)。“輪をくぐると難を除けられる”。地球温暖化防止として最近10年くらい、打ち水大作戦を行っている。夜は舞台を作り、地元住民と共に芸事を奉納しており、形になり始めた。
3.例祭・神幸祭(秋祭り)。10月15日とその後の日曜日。3基の神輿を出す。350年前のもので今も担いでいる。15日午前中に祭典を行い、境内で太鼓の演奏奉納する。毎年この時期に国内で活動している人たちが、太鼓演奏に帰って来てくれる。太鼓の後に神輿が出る。200人位の行列ができた。神輿とたま電車が踏切で遭遇したこともある。
4.卯杖(うづえ)祭。1月15日。主たる神事は夜。14日夜、小豆粥を炊きその中に竹筒を沈めて、中に入った粥の量で稲や農作物の出来を占う。伊太祁曽神社では、約1m位の梅の枝を束ねて卯杖を作り、この杖で地面を叩きつけて邪気を祓う。その後、火きり棒と火きり板を擦り合わせて火を起こしてどんど焼きを行う。また、神社の行事ではなく地元で行われている成人式の儀礼で、裸参りの習慣もある。裸で腰にしめ縄を巻いて神社まで4キロ位を走り、神前の杉の木にしめ縄を巻きつけ、無病息災を祈願するというもの。一時途絶えていたが、神社からの声掛けで復活した。






















〈神社の説明〉
1.燈籠について。「大坂積方中」(木材の組合)、「和歌山荷主中」(運送会社)、「紙仲間」(製紙会社)の3つに燈籠がある。大さかの坂が阪でないこと、また文字が右から左へ書かれていることから、奉納の時期は明治以前であると言え、昔から伊太祁曽神社へお参りしていたことが分かる。
2.歌碑(本居宣長、本居太平)が残っている。
 ・本居宣長:朝もよし 
       紀路のしげ山分けそめて
       木種まきけん
       神をし思ほゆ
 ・本居太平:山々の
       木々に栄を紀の国(木の国)の
       栄と守る
       伊太祁曽の神
3.チェンソーカービング
4.厄難除けの俣くぐり。
5.御井戸。
6.大鳥居(一の鳥居)。



 大鳥居について、次のように説明してくださいました。「2017年7月に鳥居を新装しました。横木の部分は材を削り、縦の二本の材は平成25年伊勢神宮遷宮をした折に外宮板垣御門鳥居に使われていた古材を頂戴しました。」伊勢神宮は20年に一回一等級の檜を使って建て替えられますが、使い捨てではなく次に使うところが決まっており、そのまた20年後にも、また次の20年後にも、つまり60年間使い回されているそうです。式年遷宮は1300年の歴史があり、リサイクル、植林を繰り返しながら行われていることを強調されました。
7.磐座(いわくら)。神様が降り立ったところ鳥上峯(島根県船通山)からゴールの伊太祁曽神社へ、磐(約6トン)をいただいたとのことです。



 最後に、「いろいろなご縁が繋がって、10年目という節目に講演させていただき、嬉しいです」と話され、代表幹事は「こういうお話をお聴きしますと日本人としての誇りを感じますね。現地を訪ねて日本人のルーツに触れて頂きますと、この上もない豊かな心情が湧いてきます。ぜひ皆さんお訪ねになってください」と結ばれました。


























講師を囲んで集合写真撮影



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