智の木協会活動報告

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第3回 智の木協会シンポジウムレポート

第3回 智の木協会シンポジウム レポート
平成23年3月25日(金) 17:30〜19:00
於:大阪大学中之島センター 10F ホール


                 司会:智の木協会 事務主幹 川上 茂樹氏


開会のご挨拶:智の木協会 副理事長 黒田 錦吾氏
 第3回シンポジウムへの参加と智の木協会の活動へのご理解に対してお礼を述べられました。

 また、東日本大震災で亡くなられた方々に哀悼の意を表したいと提案され、全員で黙祷をささげました。「大震災直後のことでもあり、シンポジウムの開催を躊躇しましたが、西日本の我々が元気をなくしてしまったら、被災者の方々を支援することもできないと考え、開催に踏み切りました」と黒田氏。支援の在り方について「智の木を義援金という形で渡す、あるいは、樹花を小中学校や公園等に植えてもらうよう寄付するなどの活動を通じて支援する方法など模索していきたいと思いますので、その際には、皆さんご協力をお願いします」と結ばれました。


活動報告:智の木協会事務局長 小菅 喜昭氏
 梅田富国生命ビル4階のラウンジについて紹介がありました。
智の木ラウンジの広さは約50㎡、12~13名用の会議用大テーブルと4名掛けの小テーブル(賢者の椅子)が導入されました。協会ラウンジとして、会員の方々の交流の場としてご利用いただきたいとの紹介がありました。また、ホームページについては月間1500以上のアクセスがあり、確実に知名度が上がってきた旨の報告がありました。
 智の木協会エコツーリズム第1弾の企画についてご案内がありました(6月20日~21日、一泊二日、蓼科バラクライングリッシュガーデンを巡るツアー)。


講演:バラクライングリッシュガーデン
   ケイ山田氏 「美しい地球へ!心の癒しのイングリッシュガーデン」

座長:智の木協会副理事長 小林 昭雄氏
 「ケイ山田先生とは同郷で、以前バラクライングリッシュガーデンを訪問した際に講演をお願い致しまして快諾を頂きました。この日を待ち望んでいました」と小林氏。小林氏は英国のガーデニングの専門学校“ケープルマナーカリッジ”で修了証書を得、イングリッシュガーデンの魅力にとりつかれたそうです。まち全体でイングリッシュガーデンをサポートしていく仕組みが素晴らしく、日本でもそのような仕組みを作りたい!と2008年5月4日に智の木協会を発足させたことを説明されました。


 ケイ山田氏

 先ず、シンポジウム講師として招かれたことへのお礼を述べられました。シンポジウムに先立ち、富国生命ビル4階フロアを小林副理事長がご案内、それについてのコメントをいただきました。「都会の近代的なビルの中で、植物に関する様々な情報が発信され、また、実験がなされるということ、すごいと思っています。どのように発展していくのか、また、小林先生は植物科学に関して精通しておられますので、植物の持っている不思議や科学がいろいろな方面に広がっていくのがとても楽しみです。」
 ケープルマナーカレッジとバラクラとは非常に関係が深いそうです。ケイ山田氏は2002年、2003年、2009年の3回、英国チェルシーフラワーショーで受賞しておられます。出場された際に、ケープルマナーの学長を始め生徒の皆さんが庭作りを手伝ってくれ、今でも交流があり、教授を招いたりしているそうです。
 今年は東京で過ごされていてご自身も東日本大震災被災者の一人とおっしゃっていますが、大阪駅はとても明るくて「元気でいいなあ、この元気を東京にも分けてほしい、私も頑張ろう」という気持ちになられて会場に来られたそうです。
 講演に先立ち、1通のファックスのご紹介がありました。原発事故に心を痛めた親子の方が3月19日からの蓼科でのガーデン開きに立ち寄られ、感想をファックスで寄せられたそうです。「・・・自然のままの庭に深く感銘を受けました。本当に癒され、気持ちがほっとしました。不安で仕事も手につかず、何をしてよいか分からず、何を信じて進んでいけばよいかも分からず、かといって住んでいる場所を離れることもできずに苛立ちを感じていました。バラクラは本当に自然で優しく、人間所詮自然界の生き物で、その私たちに自然は大きな力を与えてくれると身をもって感じました・・・」。
 今年の蓼科は寒くて春が遅く、スノードロップクリスマスローズなど僅かな花しか咲かない中でこのように感じて元気が出たと思ってくださる方があったことに、非常に感銘を受けたと話されました。「改めて植物の持つ力はすごいと思いましたし、私自身も少しずつ出ている植物の芽を見て、植物ってすごいと思ってきましたので、今日は皆さんにそんな植物の力を感じていただきたいと思います」と前置きされました。
ラクラは、それぞれの季節によってその表情を変えて訪れる人々を魅了しています。今年は30cm程積雪があり、雪の上に鹿、ウサギ、鳥の足跡がついていて蓼科に住んでいる動物たちとの共生を感じられたそうです。
 早春にスノードロップが咲き、フランス原産でヨーロッパでは原種のスイセンと言われている小さなラッパスイセンティータテート”(Face to Face という意味)が咲き始めると春が来たという感じだそうです。クリスマスローズには、クリスマスの頃に咲くものと彼岸の頃に咲く2種類があり、後者のヘレボルス・オリエンタリスという品種の説明をしていただきました。チオノドクサのブルー、これは天から降りてくる露の一粒を映したようなブルー、スイセンの黄色との配色の素敵な風景。どちらも球根植物。富士豆桜の下にスイセンを植えて、草むらのように仕立てる手法についても説明していただきました。
 蓼科は季節が遅く、桜の頃にチューリップが咲き、一度に春が来るといった感じになるそうです。「2500〜3000球のチューリップを配色を考えて落葉樹の下に植え、春には色が集まるようにしています。ブルーはワスレナグサスノードロップなども植えています」ということで、配色・種類全てに細かい気配りがなされていることに感服しました。枝垂れ桜の下には花弁が落ちたように見える景色「これはイギリスで見た風景を蓼科で再現、ローンデージーという芝生の中に咲いているデージーを使っています」とのこと。バラクラのシンボルフラワー“フリチラリア・メレアグリス”は下向きに咲き、花弁におもしろいチェックのような文様があるそうです。楚々と咲いている様子は可憐です。黒いチューリップは会場の人たちに感銘を与え、その頃に是非バラクラへ行きたい!という感想が寄せられました。
 花だけではなく、リンゴの木と水芭蕉の大きな葉、新緑の柔らかな緑、葉の色が風景として、白樺の木の垂直と芝の水平の中に風景としての色があることなどの説明がありました。花にばかり目がいきがちですが、実は木や葉も大きな役割をしていることに気づかされました。メドーの中のブルーのカマシア、黒のチューリップが咲いていたところ、季節が移ると異なる花が咲くように植えてあるそうです。季節ごとに一斉に花を植え替えている花壇が多い中、ケイ山田氏が進めておられる手法は私たちが花壇を作る際に大いに参考にしたいところです。
 バラクライングリッシュガーデンですから名前の通りバラに興味がわきます。ブラッシュランブラーなど、建物にバラが絡んでいる風景、キフツゲイトのように小さくても集まると雪が降っているような風景に見えるバラについての説明には参加者、身を乗り出しました。
 煙の木は20年前に初めて日本に持ち込んだとか。ケイ山田氏は庭造りに際して、これまで日本になかった植物を幾つも紹介しておられます。
ラクラでは、シンボル的場所についてはシルバー系や黄色系の葉の物を選んで植えることにより、白という色を感じる場所にするとか、ガゼボという西洋風東屋にもバラを這わせてベースガーデンにするなど、それぞれにテーマを決めて庭造りを進めておられます。日陰には葉の形や色の組み合わせで風景を作ってくれるホスタを用いていること、ゴールデンアカシアの下にはベンチを置き、柔らかい黄緑とブルーの対比で心休まる空間を作っているそうです。バラクラでは7月にアジサイが咲くので、真っ白な花のアジサイアナベルをホワイトガーデンに植えているそうです。アナベルの日本への最初の紹介者もケイ山田氏。
 植物の形の組み合わせによってできる風景の面白さの紹介、垂直の植物とダリアのような丸い植物の組み合わせ。初夏には東屋をクレマチスが覆います。ウォールガーデンでは、春にはバラ、初夏にはクレマチス、1年で何度も楽しめることをご紹介いただきました。
秋にはダリアが咲き、バラは葉が落ちて屋根が見えるくらいになってくる・・・木々は紅葉の季節を迎え、初冬には、漆の仲間、寝そべるように枝を巡らせ鳥の羽のような葉を茂らせる大変おもしろい樹形の木が美しく紅葉するそうです。紅葉の時期のバラクラもまた、必見!と参加者の一人が教えてくださいました。春には緑色の鳥の羽のような葉、秋には紅葉して赤く染まり、冬には落葉して鹿の角のような枝振りが見える、その景色が面白いと説明していただきました。
その他、バラクライングリッシュガーデンのイベントについて、ハーベストフェスティバルについて、「植育」について等々ご紹介がありました。
 ケイ山田氏のファッションは植物から生まれているとのこと。植物を20年育ててきて、その中からものづくりをされ、ご自身が体験されたことを活かしてこられた、経験に根ざしたお話は参加者の心を揺さぶり、癒し、これからの活力になったことでしょう。
これからも蓼科だけでなく、日本のあちこちでの庭造りに期待し応援していきたく思います。


質疑応答 Q. ゴールデンアカシアに憧れて2本植えたら、増えて仕方がないのですが、先生のところではどのようにされていますか?
 A. きっとその土壌がゴールデンアカシアに合っていたのだと思います。株分けして、ぜひ、周りの皆さんに分けてあげてください。
 小林 副理事長  「バラ色の暮らしという意味でバラクラと名付けられたというお話、先生はバラを暮らしの中にという思いがあったと思います。日々の暮らしの中で、緑との縁の深さは大変重要ではないかと感じました。植物と縁を持ち、絆を大事にするということを教えられました」とまとめ、ケイ山田氏へ次のようにお礼を述べられました。「お忙しい中、時間を割いていただき、我々に力と夢、また、植物の力、緑の力のすごさを教えていただいたように思います。ありがとうございました。」


閉会のご挨拶:智の木協会理事 吉田 茂男氏
 「花の色合いの話がたくさん出てきましたが、幕末に来日したイギリス人が日本の色彩はとても上品で自国に似ていると話したという記録があります。今日、ここで山田先生にこういったお話を聞くことができ、とても有意義だったと思います」と話されました。そして、「被災地の復興の際に、その土地の植生や被災者の方々の癒しをどのように作りだすかといったところを、今日のお話を参考にして考え、行動できればと思いました」とまとめられました。そういった活動も含めて、今後のご協力
を賜りたいとお願いされました。                以上