智の木協会活動報告

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智の木協会主催 第5回グリーンツーリズム 「京都伏見桃山界隈と月桂冠株式会社大手蔵を巡る一日」レポート

 智の木協会では、平成25年3月、第5回シンポジウムで月桂冠株式会社専務取締役川戸章嗣氏に「伏見の酒造りと歴史」−米・水・酒造り−のタイトルで講演していただきました。そのご縁で見学ツアーを実施しました。
 当日は朝から生憎の雨。私たちはまず伏見の七名水の一つ「石井=いわい、御香宮」の御香水を味わいました。一度は枯れてしまった御香水ですが、昭和57年に復元したそうです。
 御香宮を後に、私たちは伏見大手筋商店街を西へ、昔懐かしい市場風の竜馬商店街を歩きました。寺田屋に興味を持たれた方も多かったのですが、今回はパス。「京都百景」の一つに数えられている風景、宇治川派流から月桂冠(株)大倉記念館、内蔵などの建物を望みながら写真を撮りました。
 昼食は「月の蔵人」。月桂冠(株)の元精米所を改造してあり、入り口は町屋風で中は趣のある設え、大吟醸で乾杯後、湯葉尽くし御膳をいただきながら自己紹介、参加者同士で交流を深めていただきました。


 いよいよ大手蔵の見学となりました。その頃には雨も上がり、私たちは二号蔵の屋上に案内されて伏見の地が水・米・物流の3つの条件が揃っていたことを教えていただきました。大手蔵は一号蔵・二号蔵があり、併せて年間20万石造っておられるそうです。また、硬水で造られる灘の酒が「男酒」と呼ばれるのに対して伏見の水は軟水であり、結果伏見の酒が「はんなり」としたお酒であることも知りました。材料の酒米としては兵庫県山田錦が最良とされており、大吟醸酒の場合、重さとして50パーセント以下に精米した白米を原料としているそうです。また伏見は豊富な湧水に恵まれたこともあり、すでに秀吉の時代から酒造りが盛んになったと言われています。

 月桂冠(株)さんでは、品評会用のお酒以外は、昭和30年頃から年間を通じてお酒を造る四季醸造システムを確立し、従来の杜氏による酒造りから社員が勉強し、自社でも造れるように努力されました。また、米の浸漬、製麹、蒸米、発酵、圧搾の基本的作業の全てを機械的管理しています。「これにより、年間1000本のお酒をタンクに仕込むことができます」との醸造部の方の説明に、衛生的にしかも年間を通じておいしいお酒造りができることを実感しました。機械化された酒造りとはいえ、やはり全ての過程で人による判断が大事で、その能力を高める努力をしておられるそうです。
 圧搾機から流れ出る新酒を視覚で捕らえ、その直後に利き酒をさせていただき、参加者は「う〜〜ん、おいしい!」と満面の笑みを浮かべておられました。


 大倉記念館ではビデオで月桂冠(株)さんの歴史を短時間で学習後、大倉記念館展示棟で酒造りの各工程で使用する道具や明治期の商品の実物などを見学しました。月桂冠(株)さんは樽詰め全盛期の頃に瓶詰めに変更され、1911年には防腐剤無しの酒造りに成功しておられます。展示棟と内蔵との間に「さかみず」が滾々と湧き出ており、その味は「まろやか」と評判でした。


 内蔵では、鳳麟や“しぼりたて”など、一部のお酒のみ造っておられるそうです。1回の仕込みで900〜1000リットルのお酒ができるそうですが、ここで造られるお酒は限定品であり、酒店から商品が無くなるのもうなずけます。内蔵では、新嘗祭用の酒造りの神事も執り行われます。2階部分には、展示棟に展示しきれない京都市有形民俗文化財としての酒造道具類が分類されて丁寧に保存されていました。



 見学後は、再度利き酒。店員の方に相談しながら、皆さん大倉記念館でのみ販売されているお酒を吟味、お土産を買い求めていました。
 下見の時から、川戸専務様はじめ多くの方々のご丁重なお心に触れさせていただきました。このお心でおいしい日本酒が次々と造られていっている、と感じました。
 少し寒い日ではありましたが、参加者一同とても温かい気持ちで帰路につきました。ありがとうございました。