智の木協会活動報告

智の木協会の活動報告ブログです

2018-5-12 創立記念講演会・交流会のご報告

2018年創立記念講演会(10周年)





開会のご挨拶:智の木協会専門委員 豊田 桃介 氏 (清水建設株式会社 開発営業部長)


 智の木協会が富国生命ビル4階に入居以来格別のご支援をいただいている清水建設(株)の豊田桃介氏より、富国生命ビル建築の原点となりました「大樹をイメージして」の思いを建築会社の立場からお話いただきました。ビル建設の専門家でありますが、清水建設(株)様は、ただ単にビルを建てるのではなく、その中で事業・活動していく人たちの思いをも汲んで、同じ思いを背負い、その後の私どもの活動にも積極的に関わり支援してくださっています。

 創立11年目をスタートさせた智の木協会に力強いエールをいただきました。












 創立10周年をお祝いし、乾杯のご挨拶を田中 一夫 氏 智の木協会企業会員(アマゾンカムカム株式会社代表取締役)よりいただきました。



























 株式会社マイティ代表取締役会長 鈴木 雅也 氏(智の木協会企業会員)より、スロバキアワイン(FRANKOVKA MODRA)をご提供いただきました。続いて、片桐 新之介 氏よりワインの説明がありました。



























智の木協会11年目に向けて:智の木協会代表幹事 小林 昭雄 氏


 昨年、「社団」テラプロジェクトは、うめきたガーデンで「みどりのサンタフェスタ」を行いましたが、今年も引き続き行う旨 報告されました。

 「植育」ボックス等、植育という名を掲げて活動していますが、「植育」とは、智の木協会創立時からの言葉で、9月1日から各種シンポジウムなどを開催予定で、昨年の写真を紹介しながら予定を発表されました。うめきたは来年度から本格的な工事がスタートしますので、今年が最終年度、今後この催しの場所も考える必要がありますので、皆様の知恵をいただきたいとお願いされました。

 「植育」については、泉大津市の市長からも実践の場としてとの申し出がきています、と代表幹事。「この富国生命ビルは、都市の中にある1本の樹として地下へ行きますと“いのちの森”と名付けられていますが、そういう意味で“みどり”をビルから大阪へ、大阪から関西へ、関西から日本中にメッセージを送り出したいと考えています」と今後の目標について語られました。また、ハンガリーのヘレンド社との共通理念「地球温暖化防止」活動を念頭に、智の木協会の進化発展に努力していきたい旨のお話があり、ぜひとも皆様のご支援をお願いしたいと述べられました。




講演:関西学院大学 専門職大学院 経営戦略研究科 教授 池田 新介 氏


   (大阪大学社会経済研究所 教授 歴任)

 「自制心で人生が決まる?!−行動経済学の視点」

 行動経済学とはどんな内容なのか?難解ではと想像していましたが、池田氏の軽妙な話術でどんどん引き込まれていきました。本日は、以下についてお話いただきました。

 1.自制心で決まる!?

 2.自制心かIQか?

  (ア)3.自制とは何か?

  (イ)4.自制力を決めるもの

  (ウ)5.自制のスキル










1.自制心で決まる!?

 4才児を対象に「マシュマロ・テスト」と呼ばれる実験をした結果についての説明がありました。マシュマロを1つ、目の前に置いておき「先生がいない間に食べてもいいけれど、もし先生が戻るまで食べないで我慢していたらもう1つあげます」というセルフコントロール力を測るテストで、個人差はありますが我慢できた平均時間は6分だったそうです。

 この対象者だった子どもたちに15年後に追跡調査を行った結果、学力(大学進学適正テスト)、問題解決能力、ストレスへの対応について、マシュマロを我慢できた子ほど高いパフォーマンスで、更にその15年後、肥満度を計測したところ、マシュマロを我慢できた子ほど肥満度が低いという結果が出たそうです。自制心とは子どもの時から備わっているもので、その後の人生にそこまで影響を与えるものなのかと、この年齢になっていては如何ともしがたいのですが、興味を覚えました。

 新生児1000人を対象に行った生後30年の不健康調査(ニュージーランド)では、子ども時代のセルフコントロール能力が高いほど健康であるとの結果が、また、日本で約3700人を対象に池田氏が調査された場合では、自制力が低いほど「太っている」「依存性が高まる」「物事の処理を後回しにする」「借金をする傾向が高い」となっています。富裕度、社会的地位についても子ども時代のセルフコントロール能力が高いほど「社会的地位」「所得」「財務計画性」が高いという結果が出ています。

 次に大人版マシュマロ・テストについて説明していただきました。1年後に10,000円受け取る、1年と1週間後に10,200円受け取る、この場合、後者を選ぶ人が多いのですが、今日10,000円受け取る、1週間後10,200円受け取るの質問になると、途端に今日受け取るを選択する人が多くなるそうです。1年先のことは辛抱強く待てるのに、直近のことが待てない、このことを経済学では「現在バイアス」と言い、「現在バイアス」によって自制心を測るのだそうです。現在バイアスの有無や程度によって自制心を測ってみると、やはり、喫煙習慣、肥満の確率、借金の有無などにはっきり差が出てくるそうで、自制心は私たちの行動パフォーマンスに強い影響を与えています、と池田氏



2.自制心かIQか?


 自制心も大事ですが頭の良さも大事だろうと思う方に、次のようなデータを示されました。自制力5階層✕出身大学偏差値で調査した結果、依存消費傾向には自制心が動いている、家計所得にはIQが効いている、過剰負債傾向も重度肥満傾向も自制心が決めている、との傾向が出たそうです。予想外に自制心に左右されることが多いようです。

 生後30年の追跡調査(ニュージーランド)で、所得、社会的地位、健康、依存消費、犯罪歴について調べたところ、所得と社会的地位については認知能力と相関があるとの結果が、健康と依存消費については自制力と相関がある、犯罪歴についてはIQが高いからといって犯罪を起こさないとは限らず、自制力が大いに関係しているとの結果が出たそうです。子ども時代にきちんとしておけば犯罪は起こさない、「子どもの幸福を考えると、子どもに持ってほしいものはやはり自制心ですね」と池田氏。参加者全員納得しました。



3.自制とは何か?
 脳の中身を考えることは非常に興味深いことです。脳の深い部分は大脳辺縁系(旧脳)と呼ばれ、感情的な処理を行い、前頭葉頭頂葉(新脳)は理性的な処理を行うそうです。池田氏は「自制とは、理性脳が感情脳をどのように処理するかという問題で、理性脳が勝てば問題無いのですが、実際には理性脳は疲れやすく自制心は限られていますのでバランスが重要です」と話されました。



4.自制力を決めるもの


 「年の功」という言葉がありますが、経験値が上がっていくと男女共に自制力が上がっていき、また、男女では、女性の方がどの年齢でも自制力が高いと説明されました。

 脳機能には個体差がありますが、マシュマロを待てなかった子どもは大脳辺縁系の働きが前頭葉の働きに比較して活発であり、現在バイアスの強い人も同じだそうです。自制力はストレスとも関係があり、ストレスが高じると自制できなくなるという結果が出ているそうです。

 また、子ども時代に逆境や貧困家庭で育った場合は、喫煙・不健康・経済的困窮の確率が高く学歴が低いなどがあり、大人になってからのセルフコントロールに大きな影響を与えます。脳にも影響を与えることが知られていて、非常に深刻だそうです。米黒人の青少年における調査で、貧しくても頑張れば「レジリアンス高、うつ・攻撃性小、物質依存少」になることができますが、しかし、セルフコントロールが高い人ほど疾病率が高い、生体の加齢速度が高いという結果が出ているそうです。貧困家庭に育った人は頑張れば社会的な階層を上げることができますが、自制能力が高い程早く歳をとり、貧困・逆境では自制は命を削る部分があります、と池田氏

 自制は辛いものですが、人によっては必ずしも辛くない、それは「自制のベースライン」があるからで、「ここまでは当たり前」というベースラインまでの頑張りではあまり消耗しませんが、ベースライン以上の頑張りでは消耗が早いということですので、ベースラインをいかに上げていくかということが課題です。

 自制のベースラインを決める物には、下記のような項目があると説明していただきました。




 ・過去の習慣

 ・将来目標からの内発的動機付け

 ・家族や友人からの影響

 ・文化・社会規範、計画への織り込み

 ・マインド・セット(信念・心の持ち方)



 マインドセットには2種類あり、才能とは固定的なものであると信じる人たちと、才能とは努力によって向上するものと考える人たちに分かれるそうです。池田氏は参加者全員に挙手によって仕分けられましたが、圧倒的に努力マインドセット型の人が多かったことは智の木協会構成員の特徴ではないかとおっしゃいました。



5.自制のスキル

 先天的な部分もありますが、スキルもあります、と池田氏はヒントを説明されました。

  • ヒント1:自分に自制心が無いことを自覚すること、自分を知ることが大事。「真剣に勝負すると負けるかも知れないので、自分をごまかす」(セルフ・スクラッピング)タイプの人は要注意だとか。
  • ヒント2:誘惑(マシュマロ)を見る技術→子どもは、マシュマロが目の前に無ければ待てる、待っている間に気をそらせることをやらせる、絵本を読ませる、歌を歌わせる、マシュマロを客観視できるようにする(成分、色など)。何もしなくても自分で気をそらせることができる子どももいるし、あとから習得することもできる。
  • 機会費用をはっきりさせると、目先のことに捕らわれず、1か月後に得をする方を選ぶようになる。
  • ヒント3:自制のベースラインを高める→意志力や才能について「努力マインドセット」を育てる教育が大事。家庭教育が絡んでおり、厳しい要求をしても協力を惜しまない教育(支援的)をすると努力マインドセットが育つ。
  • ヒント4:意志力を鍛える→自制心や根気がいることを続けることによって鍛えられる。意志力を鍛錬すると、食習慣、生活、仕事全てで自制力がアップする。
  • ヒント5:苦痛の経験→克服できる苦痛と克服できない苦痛がある。克服できる苦痛を与えて、自己高揚感を味わえるように学習させることが大事。



質疑応答


 講演終了後、「自制」とは大変興味深い事柄で、たくさんの質問が出されましたが、その中から特に参加者の関心のある質問について記します。



Q:大阪にIRを作り、カジノを作る計画があります。ギャンブルで身を崩す人がたくさんいるので、ある程度の制限は仕方ないと思う部分と、自制心は個人の問題なので、と思う部分がありますが、このことについて・・・

A:経済は自由主義的な考え方が底流にあり、我々が何をしようと自由です。それが担保されているのが自由主義です。自由選択の余地を残しながら人々の選択の質を高めていこうという公共政策の考え方が大勢を占めています。カジノへ行くのは勝手、知らず知らずのうちにカジノへ行く回数がうまく制約されていくような、そのようなカジノを作ろうということがあります。身を滅ぼしそうな人程カジノへ行かなくなるようなやり方・作り方があります。人々の選択肢を制約することなく、人々の行動の質を高めていくことができます。

Q:進化するにつれて前頭葉が発達し、自制心が生まれるのではないかと思いますが、いかがでしょうか?動物は自制心があるのか無いのか、生きるためにそのような行動をとるのか、一番おいしいものから、栄養価の高いものから食べますね。前頭葉との関係は?

A:猿でリサーチした例があります。虫を食べる猿と草を食べる猿がいますが、虫を食べる猿は「待てない」のです。なぜなら、虫は食べないと逃げてしまうから。報酬(餌)の形と我々の進化の関係から、前頭葉が発達してきています。






お土産
 今回は、(株)上蓮製麺様の「Caroday」4種類(ホウレンソウ、ニンジン、トマト、カボチャ)のうち2種類をお土産にお持ち帰りいただきました。

 代表取締役社長の山田繁雄氏(智の木協会企業会員 高野化成工業株会社)より、「Caroday」について、説明していただきました。


















閉会のご挨拶:株式会社 マイティ 代表取締役会長 鈴木 雅也 氏

 「この協会は、シンポジウムのような少し固い企画もあれば“みどりのサンタフェスタ”のような楽しいイベントもあり、小林先生の企画は我々ビジネスマン以上の企画力とスタッフの方々の努力がすばらしいな、と感じています」とお話くださいました。

 また、「20周年を目指して進化していくためには、我々会員・企業がもっともっとイベントに参加して協力していくことが大事だと思います」と参加者の方々にお願いされました。