智の木協会活動報告

智の木協会の活動報告ブログです

大阪国際サイエンスクラブと共催 第10回グリーンツーリズム「日本で唯一の大工道具の博物館『竹中大工道具館』見学会」レポート

 平成27年12月8日(火)、大阪国際サイエンスクラブ様と共催で「竹中大工道具館」見学会を実施しました。智の木協会は、樹木・材木はもとより、建築、建築に関連する名工や歴史に名を残す宮大工の方々の「仕事振り」にも大いに関心を持っています。
 「竹中大工道具館」は、1984年神戸市中山手に開館、その後、2014年10月より竹中工務店本社跡地に新築・移転されたそうです。新神戸駅近く、少し坂を上っていったところに大工道具館のイメージとは程遠い、古式ゆかしい和風レストランの趣のある建物がありました。木の匂いが漂い、博物館そのものに匠の技の数々を感じとることができました。 

 参加者は、学芸員の方のご案内で地下に下りました。いきなり目の前に現われた大柱。それは、原寸大の唐招提寺金堂の柱でした。参加者は触ってその感触を確かめたり天井を見上げたりして、その仕事の偉大さに感嘆の声をあげていました。
 茶室のところでは、土壁を塗る前の状態を細かく見ることができました。確かに私が子どもの頃は、壁と言えば竹を紐で組み、その上に土を塗る方法でした。

 最近では、鋸、鑿(のみ)、カンナ、金槌、鉞(まさかり)などの道具を一通り備えている家庭は少ないと思います。備えてあったとしても、それぞれ一つずつといったところでしょう。大工という専門家が日本の木造建築を支えてきたその道具は、それぞれの用途・目的に合わせて開発された道具であり、大小様々、とても数えきれないほどでした。
 鋸一つとっても、縦挽き、横挽きがあります。歯のつけ方が異なり、目的に合わせた道具を使用すれば仕事がはかどります。カンナは、刃の出し方一つで木の削れ方が左右されます。

 切ったり割ったり挽いたりの世界で、より効率的に仕事が進むよう名工によって生み出された数々の道具の中で、唯一「墨壺」にはおしゃれな形のものが多く見られました。それぞれの持ち主によって細工が施されており、そこには大工さん達の遊び心が見て取れました。墨壺を通った糸をピンと張ると、真っ直ぐな線が板の上に引かれていた様子を思い出します。

 資料によりますと、昭和18年に東京都大田区で行われた調査では、本格的な建物をつくるのに必要な大工道具(標準編成第一形式)は179点、どんな安普請でも最低限必要な道具(第二形式)は72点であったそうです。大工道具の標準編成の展示を目の当たりにして、現存していることに先ず感動し、その美しさに参加者一同唸りました。名人(大工の)は名工の道具を選ぶ目を有しており、また、名工は名人が必要としている道具を作り上げていくことに魂を注いできた過程を学びとることができました。
 次に神社・仏閣を訪れた際には、これまでは気が付かなかったところにも目が向くことと思います。
 本見学会を実施するに当たりご尽力いただきました大阪国際サイエンスクラブ様、竹中大工道具館関係者の皆様、ありがとうございました。