智の木協会活動報告

智の木協会の活動報告ブログです

「第3回ヘレンドカフェ」(2019年4月24日開催)のご報告

 第3回ヘレンドカフェでは、講師に智の木協会会員の岩田賢造氏をお招きし、主に生産量世界第1位のブラジルコーヒーについてお話いただきました。
 岩田氏は、電気・電子がご専門で、お仕事でブラジルへ行かれた際にコーヒー園をご訪問、そこで働く方々にお会いになり、豆の干し方や豆の外皮除去の方法などを実際にご覧になりました。
 また、神戸にあります「UCCコーヒー博物館」についてもご紹介いただきました。

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 特定非営利活動法人 里山倶楽部(枚方市)の竹炭焙煎のコーヒーを、里山倶楽部代表の中村仁美様に淹れていただき、ケーキ工房フローレンス様の「木苺ショコラの香り」ケーキと共にいただきました。
 里山倶楽部様は、智の木協会協力会員としてご入会いただいております。

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 次回もその季節に相応しいケーキを作成していただきます。
 ヘレンドカフェ10回ご参加で「MIDORI-SANTA シリアルナンバー入りヘレンドカップ&ソーサー」を入手できます。
 智の木協会会員の皆様に発信しておりますので、この機会にぜひご参加ください。
 ご都合のよろしい日にご参加いただければ、結構です。

第12回 智の木協会ワークショップ レポート

  • 日時:平成30年7月13日(金)
  • 会場:大阪富国生命ビル4階 「社団」テラプロジェクトAゾーン

司会:智の木協会 理事 大河内 基夫 氏

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開会のご挨拶:智の木協会 専門委員 豊田 桃介 氏
清水建設株式会社 関西支店 開発営業部長)

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 智の木協会専門委員の豊田氏から開会のご挨拶をいただきました。最初に、参加者の皆様に、ご参加と智の木協会の活動に対するご支援のお礼を述べられました。
 本日の講師の緑・匠 又右衛門(金岡信康氏)については、「創業明治13年、日本で最も古い花卉園芸会社の代表を務められている一方で、世界をフィールドにしてみどりのプロデューサーとして活躍されています」と紹介されました。「その活躍は、テレビや雑誌などでも拝見することができますが、本日は直接お話をお聴きできますので、ご期待ください」と締めくくられました。

 

智の木協会と関連行事に関する説明:智の木協会 代表幹事 小林 昭雄 氏

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 智の木協会が関わる事項について説明がありました。5月に、「うめきた2期開発事業者募集」があり、昨日(7月12日)開発事業者決定通知が届いたことをお知らせいただきました。
 その事業者の中に、「社団」テラプロジェクトも入れていただけたそうです。みどり化を進める活動を運営しているのは「社団」テラプロジェクトですが、その中心となる組織は智の木協会であることを強調されました。
 2期の開発事業者として、三菱地所(株)を代表とするグループに決定、その中に阪急、竹中工務店等が入り、それに協力するという形でテラプロジェクト、智の木協会が入っているそうです。うめきたの場所の説明があり、公園などに智の木協会の“智”を入れていくということで、参加要請があり採択されたということです。
 コンセプトは、共に考え、一緒に創る“with”イノベーション。関係性を中心においた大阪発イノベーションの仕組み「みどり」がつなぐうめきた共創エコシステムです。「ハンガリーのヘレンド社のカップ&ソーサ―に大文字の“MIDORI-SANTA”を入れていただきましたが、“みどり”のコンセプトの中にも大文字の“MIDORI”を使っています」と代表幹事。
 また代表幹事は、「色々な形で社会提言できていますし、ここ3年間皆様のご協力をいただいて花壇作りという実装もできています。着実にその思想がまちの中に浸透してきていることは、喜ばしいことです」と述べられました。
 続いて昨年も行われた「植育」イベント、みどりのサンタの「植・食、健康」フェスタ2018シンポジウムについての説明がありました。今年は、9月から12月までの4か月間行われます。9月14日オープニングシンポジウム、「第1回アーバンアグリカルチャーの目指すところ」については、「第1次産業から第7次産業、Joyful Agri.へ」というテーマで、大阪府と共に進めますが、我々としては近郊農業の形をジョイフル・アグリとして提案していきます」と新しい単語が飛び出し興味をそそりました。また、9月28日開催の「名木シンポジウム」については次のような説明がありました。「日本にはお寺お宮がありますが、衰退してきています。そこでお寺お宮を巻き込んで新しい活動をということで、金岡先生、木の神様を祀ってある伊太祁曽神社さんに思いを伝えたところ、伊太祁曽神社に新しい祭をつくる話が持ち上がり、それに向かってのシンポジウムを開催することになったのです。」
 本日の講師については、「金岡氏は独特の思いから仕事を進めておられますし、我々と共に社会実装していただくということで、(一社)日本みどりの研究所を一緒に設立させていただきました。智の木協会の思いを担っていただく組織として発展させていただければ嬉しいです。また、みどりのサンタアンバサダーとして、世界中を走って活躍していただいています。本日のお話も大変興味深いものと期待しています」と紹介されました。

 

講演 緑・匠 又右衛門(金岡信康氏)
(有限会社 薔薇園植物場 代表取締役 社長)

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タイトル:「世界の感動を日本に。日本の感性を世界へ。」

1.バラエングループとは
 (有)薔薇園植物場が中心になって、花卉園芸全般の卸売りを軸にして、関連会社4社と共に環境関係、植物工場、デザイン事業など植物や自然に関わる仕事にチャレンジしています、と現状を説明されました。
 薔薇園植物場は、初代金岡又右衛門氏が宝塚で明治13年に創業され、明治中期にかけて宝塚のまちづくりにも大きく関わられたそうです。昭和初期になると、2代目金岡喜蔵氏が宝塚で薔薇の生産に深く関わられ、海外への輸出、国内での通信販売を積極的に行われたそうです。昭和中期・後期には、3代目金岡信也氏が、業界に先駆けて量販店との取引を開始されました。信康氏は昭和後期に入社され、その頃は切り花、小売部門の担当でしたので、先ず、量販店に対する物販のための加工工場を設立、その際に全ての事業の見直しを行い、切り花の中卸ローズガーデンを立ち上げられたそうです。生産者の安心・安全な花卉生産を目指して、アースフィール設立、その時期にはまた、ガーデンデザインなどを行うNob’sデザインを設立されました。
 約12年前にバラエン植物場の代表に就任された金岡氏は、鉢物卸のローズガーデンプランツ(株)を、約6年前には植物の輸入を行う貿易部を、平成27年にはガーデン空間デザインの会社、Tea’sデザインをと意欲的に設立され、これを機に開拓者であった初代又右衛門の名前を借り、気合を入れて活動を始められたということです。

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2.又右衛門とは
 ご自身は、金岡信康は経営者として、又右衛門は各地を回る人間として展開しています、とおっしゃる金岡氏。その切り替えは私ども凡人もぜひ見習いたいものです。
 又右衛門としての活動は、植物や現地の人を第一に、植物の命にこだわりを持つこと、世界を回り植物や現地の人、生産者と直接触れ合いながら思いを共有することを第一に考えておられるそうです。
 ご自身の進むべき道の指針となっているのは、先代、先々代の言葉であり、精神的にも体力的にも厳しい時期を乗り越えさせてくれたと申されました。先代は、「お前を育てたのは社会なので、社会に恩返ししなさい」と。また、先々代が戦時中の厳しい中で、昭和16年に発行されたバラエン植物目録第三百七十六號に以下のことを記載していることを胸に抱き、世界へ船出しましたと述べられました。「物は貧しくなっても心まで貧しくすることは、世界をリードする大国民らしくない」「~~追いつめられるべきではなく、どこかに余裕を残しておくべきであろう」「国民的基礎の上に立つ生産的な文化政策、健全なる娯楽の必要さは今日痛切」「~~ますます優秀品の生産や新種の作出に無報酬の努力こそ、我々に課せられた公栄有る職域奉公と~~」、つまり、「歴史を継承しこれを発展させて次代の日本国民へ譲り渡すべき重大な役目がある」と。

 

3.世界の感動を日本に

 1)世界の植物
 世界のユニークな植物輸入を始められて僅か6年ですが、国際ルールに法りパートナーを公開して貴重な植物を取り扱い、活動している日本では数少ない企業と自負しておられます。金岡氏の活動は、現地で生産者や専門家から高い評価を受け、スペインで3社、オーストラリアで3社の世界を代表するナーサリーの日本総代理店、正規代理店として認められているそうです。
 金岡氏は、輸出入のライセンスを取得して生産者の権利を保護し、その価値を高めていこうとしておられます。

①スペインを代表するナーセリーは、オリーブやデザットプランツ、ユニークな植物を送り出すために、日本向けの管理施設に「又右衛門エリア」を設けてくださり、素晴らしいパートナーシップが出来上がってきています。そのパートナーシップは現在の活動の礎になっていますとお話になりました。
 スペインといえばオリーブ、樹齢約100年、300年~1000年位の古木、その存在感と花言葉がすてきということもあり、最近多方面から問い合わせがきているそうです。

  • ユッカ ロストラータ「ブルースワン」:
    葉が広がるこの姿を「ブルー・スワン」と名付け、専門家から高い評価を受けた。現在の、日本で流通している同様の植物の80%がメキシコ産だが、それに比べてスペイン産は明らかに品質が高い。
  • ユッカ ロストラータ ヒドラ
    この名前の由来は、ギリシャ神話に登場する9つの頭を持つ大蛇、ヒドラに似ているところから来た。
  • ユッカ リギタ、ユッカ フィリフィラ:
    耐寒性があり、-20℃くらいまで、また、水もあまり必要ないなどの特徴を持つ品種。
  • アガペ:人気で確保が難しくなってきており、大型のアガペはなおのこと入荷が難しく問い合わせが多い。
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③オーストラリア
「オーストラリアでもビジネスパートナーと仕事の枠を超えたお付き合いがあります」と金岡氏。海外ではペーパーでの契約のみならず、家族的な付き合いができ、植物の購入の際に反映されているそうです。

  • グラスツリー:
    日本へ移される時には土を全て落とす必要があり、その際に菌根菌も全部落ちてしまい、輸送は大変難しかったが、両国の研究者と提携し成功させることができた、と金岡氏。グラスツリーは1年に1㎝位の成長速度で、現在、大きさが1m以上のものの海外への輸出ができないという規制がかかっており、このような大きなグラスツリーが置かれていることは、自分たちが世界でもトップクラスだと言っていただける、と金岡氏。
  • ボトルツリー:
    オーストラリアのシンボリックな木の一つで、愛らしい形状は多くの人の注目を集めている。
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  • リーファーン類:
    日陰と水が好きな植物で、活躍できる場面が多くあり、最近人気が高まっている。
  • イカス(ソテツ類):
    ほぼ全種ワシントン条約の規制対象品種になり、動物に例えるならばオランウータンやパンダの部類で、商業目的の輸出入は法律で禁止されているが、種から育てたという証明と輸出入のライセンスを持っている事業所は輸出できる。金岡氏のパートナーはライセンス保持者のため、法的に認められた形で輸入ができる。
  • イカス(マクロザミア ムーレイ):
    300年に1メートル位しか育たない貴重な種類。紹介されたサイカスは樹齢約1000年。木肌が黒いのは、山火事の跡で、山火事に遭っても生き延びるとか。現在豊中の植物場に40~50本置いてある。
  • バオバブ(アダンソニア グレゴリー):
    マダガスカルに8種類、アフリカに1種類、オーストラリアに1種類ある。
  • その他の国々からもユニークな植物が日本向けに用意されている。

 

2)輸入するための手順、現地での活動
 現地の人に任せっきりになることが多い中、金岡氏は現地に出向き一緒に作業を行うとか。分からないことがあまりにも多いからだそうです。

①採取:できるだけ日本の気候に近い環境のものを採取するように心がけている。
②洗浄:日本に入れるためには、土は一切付着していてはいけない。根の強い植物は高圧洗浄できるが、弱い植物ではホースで水を流しながら土を落としていく。場合によってはハケで落としていくこともあり、1本の木に数日かかることもある。
③養生:そのままラッピングして日本へ送る業者もある中で、金岡氏は土に代わるピートモス等に植え込み、発根したかを確認後輸送。1年位かかりコストアップになるが、輸送中や日本到着後に枯れるようなことがほとんどなくなった。
④輸送:飛行機かコンテナを利用、常温であるいは冷蔵保存で運べるコンテナがある。規格外の大きさのものを運ぶ、フラットラックという種類もある。コンテナでも、船でも(船底と甲板では温度が異なるため)温度調節についていつも指示する必要がある。

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⑤入国:ヨーロッパからは約40日、オーストラリアから約2週間かかって入国する。コンテナヤードで蓋を開けて以上がなければ本検査へ。倉庫へ移して植物の品種によって異なるが、30~50%抽出しての検査。鉢から全部抜き根を細かく見ていく。
チェック項目 1.害虫 2.病気の有無 3.土の付着
害虫の場合は燻蒸処理する。最も困るのは、土が付着していたという場合で、1本でも土が付いていたら残り全ての検査になる。全部洗って土を落とすという作業になるが、実質日本に着いてからは洗うことができない。理由は、洗い流した土が排水溝を通って日本に上陸してしまうため。
⑥養生→品質チェック→出荷:順次植物を出荷。
⑦この春に来た植物:
 パラグアイ産 バラボラッチョ
 スペイン産  1000年オリーブ 豊中で養生期間に入っている。

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4.日本の感性を世界へ

 1)海外での活動
 時代の流れとして、世界の多くのデザイナーは、草花や木を鑑賞することを主としたデザインを発表して、それが評価を得ているとのこと。そこで金岡氏は、日本人として先人が残してくれた日本文化を再構築し、そういうコンテンツのデザインを世界へ向けて発信したいと思っておられます。3年前に立ち上げられたTea's Design の活動のムービーの紹介がありました。写真、音楽、歌、全て又右衛門チームメンバーだそうです。

①2016年4月、ベルギーで開催の王立園芸協会主催の花の展覧会に出展。5年に一度の祭典で、200年以上の歴史があり、ランドスケープに重きをおいた祭典。
海外の変わった植物を使い、その中に日本人の感性、光や陰を使った提案をし、外国人部門で銅メダルを獲得。

②2016年、Watahan(綿半)という企業のスポンサーシップのもと、世界最高峰のガーデンショーと言われる、英国王立園芸協会主催の Chelsea Flower ShowにYano TEAがメインデザイナーとして参加。3つのカテゴリーがある中、ショーガーデン部門へ出展し、シルバーメダルを獲得した。ショーガーデン部門は、Chelsea Flower Showでも最も花形の部門。日本人ではまだショーガーデンでは金メダル獲得者は無い。

③2016年 Seoul Garden Show
ソウル市長からチームのデザイナーが特別招聘を受けて、メインガーデンのデザインを行った。金岡氏が植物のプロデューサーとして参加。全面にソウル、背面に東京をイメージして作庭した。ソウル市の花コスモスを多く使った。日韓ワールドカップ記念公園内に永久的に保存されている。

シンガポール ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ
世界を代表する植物のテーマパーク。ここには世界中からユニークな植物が集まって来ている。ここに植物を供給しているサプライヤーがパートナーであることから、彼らと活動することで世界的なネットワーク規模で植物調達が可能になっている。又右衛門チームも、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイに多くの植物を輸出したりイベントのプロデュース提案をしている。大型の植物、ツバキ、サクラ、ドウダンツツジ、ボタン等の輸出、特にボタンは高い評価を得ている。モクレンなどの樹木、チューリップ、ベゴニア、トルココキョウ等の切花も多く輸出した。シンガポールだけでなく、各国からの訪問者に日本産の植物のすばらしさを分かってもらった。

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2)輸出プロジェクト

① 華道書道の若い匠を支援しながら、独特の空間を作り上げて世界へ発信していこうとしている。

② FOREST FARM
おかあさんといっしょ」の番組や無印良品のイベントにも採用されてきたプログラムがあり、これらは海外でも非常に高い評価を受けている。このような自然環境学習プログラムによって、世界中の多くの子どもたちが自然に関わりながら学べる機会を作っていくことによって、次世代でも一つでも多くの大切なことを伝えていきたいと思っている。

③ 植物系の建築を進めている国が多くなっていることについて、「植物の必要性を感じているからではないか」と金岡氏。そして、小林代表幹事がずっとエデンプロジェクトを理想として掲げていることから「うめきたのような所にも近い将来このような建築物が造られることを望んでいる。我々も先生の力を借りながら更に進化させた形で実現にむけてやっていきたい。世界中で仲間と植物とを融合させ、世界に胸を張って紹介できる植物を育てていきたい」と抱負を述べられた。

 

5.国内の様々な活動

  • ウッドデザイン賞の受賞
  • IOCバッハ会長の名誉博士号授与式記念植樹で。現役の選手のオリーブの冠を香川県の生産者の方々と一緒に作った。
  • 大阪堂島リバーフォーラムで開催された、team Lab. Jungleというイベント。
  • オーストラリア大使館で開催された Australlia Day in Spring
  • 普段はコンクリートの打ちっぱなしの無機質なエントランスに、オーストラリアの風景をという依頼を受け、プロデュースした。

6.国際交流プロジェクト

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1)命をつなぐプロジェクト バオバブ編:日本最大のバオバブ移植プロジェクト。
 以前からオーストラリアでは大規模な開発が行われており、その地域でバオバブが伐採されてしまうため、金岡氏は現地のパートナーの協力を得てオーストラリア国内で一旦移植されたそうです。日本の気候ではバオバブは生きられませんが、広島市の植物公園の大規模温室のリニューアルオープンに合わせて、そこで受け入れ可能との情報が入り、日本の環境に合うバオバブを見つけられました。枝を全部落とし、5~6時間かけて重機で根を掘り起こし、洗浄や殺菌消毒を行う施設に送り、慎重に作業を進め、洗浄後、2か月間乾かし、完全にラッピングして日本へ輸送されました。約2週間後大阪港へ着き、検査合格後広島へ、無事植栽を終えられた金岡氏。このプロジェクトには2社のテレビカメラがオーストラリアへ同行し、密着取材し1時間番組にして放映されました。6月には秋篠宮殿下が訪問され、金岡氏が説明されたそうです。

2)マダガスカルプロジェクト
 厳しい生活環境の中で人々は世活のために固有種の栽培、許可されていない植物の採取、炭にするなどし、急速に自然破壊が進んでいることをお話になりました。150円稼ぐために180kgの木を焼きCO2を出して炭をつくり換金している現状を目の当たりにして、金岡氏は木彫り製品を作ることにより150円を稼げるプロジェクトを立ち上げられました。本日の参加者へのお土産の木彫り製品こそがそれです。「皆さんの支援こそが彼らの生活の支援になり、環境保全に繋がります」と金岡氏。
 現地では他にも大人や子どもに雇用を創出し、学校も作っている人がおられ、彼らが作った鉄製品も近々日本に並ぶようになるそうです。

 

7.今後の展開

 これまでに「社団」テラプロジェクトの専門委員として精力的に活動を続けてこられた金岡氏、みどりの研究をするために、東京農大に隣接する進化生物学研究所で学ばれることになられたそうです。更に、みどりの力を最大限に活用し、社会実装のための研究をしていく(一社)日本みどりの研究所を小林昭雄理事長の支援の元、立ち上げられました。
 「みどりのサンタは赤いサンタと異なり、植物の素敵さを伝えるために、365日活動することができる」ことから、「このような機会を通じて植物からのメッセージを伝える活動を大切にしていきたい。海外でもその活動を伝播するために、ヨーロッパ、アフリカ、アジアなどを訪れ、シンガポールのガーデンズ・バイ・ザ・ベイでは、多くの国々の人たちと話をすることができました」と述べられました。

 

8.世界を舞台に活動するチームづくりをめざして

 マダガスカルでは、子ども達と植林活動をされた金岡氏。彼らには、誤った道を進んだ先進国のやり方を繰り返してほしくない、この素敵な自然を守りながら歩んで行ってほしい、もし、先進国と同じ道を歩みそうになった場合には、それを止めることができるチームや人間にならなければいけないと力説されました。
 「外国語は話せません」とおっしゃる金岡氏ですが、世界中30か国以上を訪れて人々と繋がり支えていただいている、と述べられ、話すことができない植物に出会うことで植物から多くのことを学び教えてもらった、と自信を持ってお話になりました。植物は酸素を作り出し、自分の一部や全てを差し出して野菜や果実として私たちに食を与えてくれている、衣食住、薬草までも、無言で当たり前のように全ての命の継続を支えている、と明言されました。

 

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9.最後に

 「今後も、植物、緑の力・すばらしさを、そして植物からのメッセージを世界の舞台で発信していきたい。本日皆さんに会えたのもみどりのお陰だと思っています」と謙虚におっしゃいました。世界中を回られることで、これだけ最先端の力が発揮されても、経済力があっても戦争や環境破壊は無くならず、厳しい地球環境を目の当たりにされることが多く、今後はみどりの力を最大限に生かしていきたい、みどりの力によって地球をデザインしていきたい、と抱負を述べられました。
 金岡氏のみどりに対する考え方、行動、全て、植物に携わる職業人としてよりも人間として植物に畏敬の念を抱かれる姿勢に頭が下がります。
 日本では、あまりにも植物が周りに繁茂し、むしろ草刈りや除草の大変さが身に染みて植物の持つ力やその偉大さ、大切さを忘れてしまっているところがあります。世界の実情を考え、今一度植物について、植物の力・偉大さに気づかされるご講演でした。

 

閉会のご挨拶
智の木協会 企業会員 スシックスジャパン株式会社 代表取締役 三嶋 浩義 氏

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 「柿の葉寿司の会社です」と自己紹介されました。小林代表幹事との接点は「柿の葉ってみどりだねー」ということから発展し、発想豊かでいろいろなことをおっしゃるそのことが、どこかで生きてくるとの思いで智の木協会に入会しました、とお話になりました。
 柿の葉寿司について、「葉には抗菌作用があって、先人の知恵で柿の葉で寿司を押すことにより空気を出し、鯖を酢でしめると長持ちしますので、江戸時代頃から作られてきました」と説明されました。また、北新地で開発された「5種のいなり寿司」について、交流会でも準備していただきましたので味わってください、と報告されました。

 

交流会の様子

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「第2回ヘレンドカフェ」(1月28日開催)のご報告

 智の木協会では、2018年10月15日に第1回「ヘレンドカフェ」を開催し、引き続いて2019年1月28日に第2回目を開催しました。
 折しもインフルエンザ大流行の時期で、欠席者が多かったのですが、小林代表幹事にヘレンド社訪問時のお話をしていただき、また、その際に同行してくださった方々のお話も伺い、ハンガリーへ旅行した気分になりました。
 参加者はケーキ工房フローレンスさんの、いちごたっぷり リッチなケーキ「マーガレット」と、「森をまもるコーヒー 竹炭焙煎珈琲」を里山倶楽部の中村仁美様に淹れていただき、優雅な一時を過ごしました。

 

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新年講演会(2月6日開催)のご報告

司会:智の木協会理事 大河内 基夫 氏

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開会のご挨拶:智の木協会 専門委員 掛川 敏幹

(富国生命保険相互会社 不動産部長)

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 景気・オリンピック・大阪万博等、多岐にわたってお話いただき、特に大阪万博との関連について、「大阪万博のテーマは“いのち輝く未来社会のデザイン”で、健康、医療、農業、食品などの分野がクローズアップされています。智の木協会は、植・食、健康をテーマに活動していますので、かなり親和性が高い集まり、組織だと思います」と述べられました。」
 また、「本日の講師、川西様につきましては、非常に関心の高いテーマで、しっかりお聞きしたい」と期待感を示されました。

 

講演:川西
(幸南食糧株式会社 取締役会長、「川塾」会長、智の木協会 企業会員)

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「ちょっとの気づきで企業も人も変われる

  -激動期における小さくても元気な一流企業の作り方-」

 

 川西氏は機会ある毎に「気づき」が大事であるとおっしゃっています。人はどんなに立派な訓示や助言を受けようとも、本人の「気づき」無くては変わりようがありません。当日、「気づき」その「きっかけと実践」について具体的にお話をしていただきました。
 「挨拶は一流企業の原点である」。こう言い切れることに辿り着かれた川西氏。どんなに会社を大きくしたいと思っても、そのために広報や営業を頑張っても、基本は何なのかに気づかなければ先へは進めません。川西氏は「社内挨拶ができない者は一流の挨拶はできない」また、清掃活動を通して「小さなことを一流にしていけば会社も一流になる」を信念に一日一人ゴミを2個拾う「一日2運動」を進めてきておられます。
 米問屋に就職された川西氏が厳しい仕事を乗り越えられたのは「小さくてもいい、何かをやってみたい、頑張って両親を楽にさせてやりたい」という思い、夢、目標を持っていたからこそと話されました。そして、目標とは「人生をデザインする道具」であると述べられました。どんな職業についても我慢すること、諦めないことが必要であると気付かれた川西氏は、苦労があっても苦労という言葉は使わず、努力という言葉をたくさん使うようにしてこられたそうです。努力する人は夢を語ると思う、とも述べられました。楽して成功するような魔法の方法はどの業界にも無いと思う、人の3倍成功したいなら3倍努力するしか仕方がないと思うとおっしゃいました。「みんな成功できるパスポートは必ず持っている、成功できるパスポートがあるから価値と魅力がある、しかし、成功という扉は自動ドアではない、努力した人しかその扉は開かなくなっている、努力した人は報われると思う、努力した人は嘘をつかないと思う」と続けられました。どの言葉にも説得力があります。
 8年後、独立された川西氏、追い風の時でも中小企業は危機感を持つ必要があるとおっしゃっています。「挨拶」が社運を左右することに出くわされたことが、大きな転換に繋がりました。大きな取引先からある日突然「取引をやめる」と宣言されたその理由が「お宅の社員は挨拶ができない、品物をぞんざいに扱う」という指摘に愕然とされた川西氏は、その時2つのことを学ばれたそうです。

①物のクレームから人のクレームの時代が来た。

②三割を占めるお客さんを顧客としてはいけない。

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 会社で川西氏は社員が挨拶ができなかったこと、品物の扱いについてなど社員を責めるのではなく「責任は自分にある」とした上で「朝も帰りも挨拶もできない集団が、お客さんの心に響く仕事・挨拶は無理だから、先ず、社内の挨拶を一流にしよう」と提案されました。社員から「売り上げに直結するのか?気恥ずかしい」などなどの発言に「当り前のことがこれだけ難しいのか・・・では、それをどこよりも素晴らしくやり遂げた時には、それが価値あるものになる、企業の魅力になる」と気づかれた川西氏。さっそく実践されました。1日目、2日目は何とか声が出ていましたが、3日目にはほとんど挨拶が無くなってしまったそうです。挨拶一ついかに難しいかが伺えます。川西氏は、何かを変えたい、何かを形にしたいというイメージを持つならば我慢が必要とおっしゃっています。
 そのうち、一緒に「社内挨拶」に取り組むと社員自から申し出があり、「社長、どうせ挨拶するんだったら握手してやろう」とも言われ、びっくり。理由を聞くと「握手すると相手の元気さと心のぬくもりを感じるから」と。次に彼は挨拶に「名前をつけましょう」と。それも「元気体温計挨拶」。結果三年半かかったそうですが、職場が元気になった、職場が明るくなった、職場のコミュニケーションが取りやすくなった、積極性が出てきた等々、といいとこずくめです。
 その後メディアからの取材の申し入れがあり、放映されるとその反響は予想以上で、新卒採用ができるようになった現在の社員の平均年齢は31歳だそうです。
 ご参考になれば、とお話になった言葉、「部下を変えようとするところに問題がある、自分が変わらなければ周りは変わらない」「名刺の肩書が大きくなればなる程、自分で気づくしかない。社員は気づいていても言わない」。
 また、社員が多くなれば各部署のリーダーが必要になってきますのでリーダー候補をつくり上げておられるそうですが、リーダー候補とは「挨拶の上にもう一言付け加えることができる人」だそうです。「選ばれる企業には、選ばれる人がいる」「これからの企業格差は、人で格差が付く時代を今迎えている」それぞれの言葉に重さを感じます。そして、川西氏は、身だしなみは一瞬にして「こんな人」と感じてもらいますので、非常に大切だと、本日、智の木協会でのご講演を意識して「緑のネクタイ」を結んでお越しくださいました。それに加えて出す声は企業の業績に比例すると思うとおっしゃいました。小さな声の企業は長持ちしないとも。
 挨拶は人の心をも変えます。「挨拶が一流」「きれいが一流」「元気が一流」、これらが一流の原点と言い切られる川西氏です。

Q.レジュメの「経営の三王」について質問がありました。

①危機を持ち続ける。
②存在・・・周辺でタクシーの運転手に聞かれても、誇りに思われるような会社をつくらないといけない。日本一美しい会社をつくろう!「美しい」会社は、最高のセールスマンの会社になる。「一日2運動(一人一日ゴミを2個拾う)」小さなことを一流にすれば、大きなことも一流になっていく。それを運転手が宣伝してくれる。
③責任・・・リーダーは「私の責任です」と言えること。

 川西氏は、「関西発仕事コンソーシアム~“夢”やってみなはれ勉強会~」の会長も務めておられます。
 最後に、「社団」テラプロジェクト理事長、智の木協会代表幹事 小林昭雄氏より、“夢”やってみなはれ勉強会発足の経緯についての説明がありました。



交流会

 交流会は場所を移動して、「社団」テラプロジェクトと合同で行いました。いろいろな分野の方々にご参加いただき、新しい出会いもたくさんあったことと思います。

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2018-10-15 「第1回スイーツマルシェ/ヘレンドカフェ」のご報告

 智の木協会は、テラプロジェクトの事業展開に協賛し、2017年5月のハンガリーヘレンド社訪問を機として、同社製、「アポニーグリーン」カップ&ソーサ―に“MIDORI−SANTA”One Greenロゴを200客限定で刻印していただくことができました。



 ヘレンド社は、磁器製造で使うエネルギーをみどり化活動でオフセットすべきとの企業哲学をもっておられ、地球温暖化解消、都市緑化、植育活動の普及に理解を示してくださり、夢のような企画が実現しました。

 智の木協会では、このカップ&ソーサ―をご購入いただいた皆様やご購入予定の方々、会員の方々を対象に、第1回ヘレンドカフェを開催しました。







2018-8-7 「スロバキア ワインの夕べ」ご報告

ご挨拶:智の木協会代表幹事 小林昭雄氏


 智の木協会とスロバキアワインとの接点について、「2年前に(株)マイティ(智の木協会企業会員)の鈴木会長様とお会いし、スロバキアを訪れる機会をいただきました。(株)マイティ様は、スロバキアワインを輸入しておられますので、ワイナリーへもご案内いただき、世界中のワイン生産国の中では小規模ですが、非常に質の良いワインを生産していることを知り、この度、試飲していただく機会を設けることにしました」と感謝の意を表されました。









講師:スロバキア ワイン アンバサダー 大野 春美 氏


 まず、スロバキアの位置を説明していただきました。スロバキアと聞けば日本人の多くが「ああ、チェコスロバキアね」と言いますが、1993年1月に分離独立してスロバキアになりました。北西にチェコ、北にポーランド、東にウクライナ、南にハンガリー、南西にオーストリアと多くの国に接している中央ヨーロッパの国です。
































 大野氏によりますと、スロバキアはブドウ生産の北限と言われていて、非常に冷涼な地でピュアな味わいが生まれるそうです。ブドウの種類から圧倒的に白ワインの生産量が多いそうですが、その中から以下の4種類を試飲用に選んでいただきました。


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1.スパークリング:セクト・パルフィ・ブリュット

  力強い泡とキレのある味わいとやわらかなコクがあり、

  シャンパーニュのような満足感。

  ワイナリー:ヴィーニョ・ニトラ

2.白:ヤグネット ミュラー・トウルガ

  フレッシュなインパクトで、すっきり爽快な味わいの中に、

  瑞々しい果実味が感じられるコスパ抜群のワイン。

  ワイナリー:カルパッカ・ペルラ

3.白:MS ヴェルトリンスケ・ゼレネ

  スロバキアで一番多く作られる代表品種。

  爽やかな風味とコクのある味わいを併せ持ち、綺麗な後味。

  和食にもよく合う。

  ワイナリー:ムルヴァ・スタンコ

4.赤:Ex フランコフカ・モドラ

  スロバキアを代表する品種。マリアテレジアが愛した

  “ラチャ産”フランコフカ。果実味と成就感のバランスが良い。

  ワイナリー:ヴィラ・ヴィーノ・ラチャ





 軽食としては、フランスパンのバケット、スパークリングにはオレンジを、白と赤ワインには3種類のチーズを合わせました。他には塩豚、ウィーンからソーセージの差し入れ等々、楽しく学んでおいしさ満喫のセミナーでした。

 セミナーでの試飲の他、試飲販売コーナーも設けていただき、参加者の皆様に大変喜んでいただきました。次回の開催を望む声が多く聞かれました。





2018-5-12 創立記念講演会・交流会のご報告

2018年創立記念講演会(10周年)





開会のご挨拶:智の木協会専門委員 豊田 桃介 氏 (清水建設株式会社 開発営業部長)


 智の木協会が富国生命ビル4階に入居以来格別のご支援をいただいている清水建設(株)の豊田桃介氏より、富国生命ビル建築の原点となりました「大樹をイメージして」の思いを建築会社の立場からお話いただきました。ビル建設の専門家でありますが、清水建設(株)様は、ただ単にビルを建てるのではなく、その中で事業・活動していく人たちの思いをも汲んで、同じ思いを背負い、その後の私どもの活動にも積極的に関わり支援してくださっています。

 創立11年目をスタートさせた智の木協会に力強いエールをいただきました。












 創立10周年をお祝いし、乾杯のご挨拶を田中 一夫 氏 智の木協会企業会員(アマゾンカムカム株式会社代表取締役)よりいただきました。



























 株式会社マイティ代表取締役会長 鈴木 雅也 氏(智の木協会企業会員)より、スロバキアワイン(FRANKOVKA MODRA)をご提供いただきました。続いて、片桐 新之介 氏よりワインの説明がありました。



























智の木協会11年目に向けて:智の木協会代表幹事 小林 昭雄 氏


 昨年、「社団」テラプロジェクトは、うめきたガーデンで「みどりのサンタフェスタ」を行いましたが、今年も引き続き行う旨 報告されました。

 「植育」ボックス等、植育という名を掲げて活動していますが、「植育」とは、智の木協会創立時からの言葉で、9月1日から各種シンポジウムなどを開催予定で、昨年の写真を紹介しながら予定を発表されました。うめきたは来年度から本格的な工事がスタートしますので、今年が最終年度、今後この催しの場所も考える必要がありますので、皆様の知恵をいただきたいとお願いされました。

 「植育」については、泉大津市の市長からも実践の場としてとの申し出がきています、と代表幹事。「この富国生命ビルは、都市の中にある1本の樹として地下へ行きますと“いのちの森”と名付けられていますが、そういう意味で“みどり”をビルから大阪へ、大阪から関西へ、関西から日本中にメッセージを送り出したいと考えています」と今後の目標について語られました。また、ハンガリーのヘレンド社との共通理念「地球温暖化防止」活動を念頭に、智の木協会の進化発展に努力していきたい旨のお話があり、ぜひとも皆様のご支援をお願いしたいと述べられました。




講演:関西学院大学 専門職大学院 経営戦略研究科 教授 池田 新介 氏


   (大阪大学社会経済研究所 教授 歴任)

 「自制心で人生が決まる?!−行動経済学の視点」

 行動経済学とはどんな内容なのか?難解ではと想像していましたが、池田氏の軽妙な話術でどんどん引き込まれていきました。本日は、以下についてお話いただきました。

 1.自制心で決まる!?

 2.自制心かIQか?

  (ア)3.自制とは何か?

  (イ)4.自制力を決めるもの

  (ウ)5.自制のスキル










1.自制心で決まる!?

 4才児を対象に「マシュマロ・テスト」と呼ばれる実験をした結果についての説明がありました。マシュマロを1つ、目の前に置いておき「先生がいない間に食べてもいいけれど、もし先生が戻るまで食べないで我慢していたらもう1つあげます」というセルフコントロール力を測るテストで、個人差はありますが我慢できた平均時間は6分だったそうです。

 この対象者だった子どもたちに15年後に追跡調査を行った結果、学力(大学進学適正テスト)、問題解決能力、ストレスへの対応について、マシュマロを我慢できた子ほど高いパフォーマンスで、更にその15年後、肥満度を計測したところ、マシュマロを我慢できた子ほど肥満度が低いという結果が出たそうです。自制心とは子どもの時から備わっているもので、その後の人生にそこまで影響を与えるものなのかと、この年齢になっていては如何ともしがたいのですが、興味を覚えました。

 新生児1000人を対象に行った生後30年の不健康調査(ニュージーランド)では、子ども時代のセルフコントロール能力が高いほど健康であるとの結果が、また、日本で約3700人を対象に池田氏が調査された場合では、自制力が低いほど「太っている」「依存性が高まる」「物事の処理を後回しにする」「借金をする傾向が高い」となっています。富裕度、社会的地位についても子ども時代のセルフコントロール能力が高いほど「社会的地位」「所得」「財務計画性」が高いという結果が出ています。

 次に大人版マシュマロ・テストについて説明していただきました。1年後に10,000円受け取る、1年と1週間後に10,200円受け取る、この場合、後者を選ぶ人が多いのですが、今日10,000円受け取る、1週間後10,200円受け取るの質問になると、途端に今日受け取るを選択する人が多くなるそうです。1年先のことは辛抱強く待てるのに、直近のことが待てない、このことを経済学では「現在バイアス」と言い、「現在バイアス」によって自制心を測るのだそうです。現在バイアスの有無や程度によって自制心を測ってみると、やはり、喫煙習慣、肥満の確率、借金の有無などにはっきり差が出てくるそうで、自制心は私たちの行動パフォーマンスに強い影響を与えています、と池田氏



2.自制心かIQか?


 自制心も大事ですが頭の良さも大事だろうと思う方に、次のようなデータを示されました。自制力5階層✕出身大学偏差値で調査した結果、依存消費傾向には自制心が動いている、家計所得にはIQが効いている、過剰負債傾向も重度肥満傾向も自制心が決めている、との傾向が出たそうです。予想外に自制心に左右されることが多いようです。

 生後30年の追跡調査(ニュージーランド)で、所得、社会的地位、健康、依存消費、犯罪歴について調べたところ、所得と社会的地位については認知能力と相関があるとの結果が、健康と依存消費については自制力と相関がある、犯罪歴についてはIQが高いからといって犯罪を起こさないとは限らず、自制力が大いに関係しているとの結果が出たそうです。子ども時代にきちんとしておけば犯罪は起こさない、「子どもの幸福を考えると、子どもに持ってほしいものはやはり自制心ですね」と池田氏。参加者全員納得しました。



3.自制とは何か?
 脳の中身を考えることは非常に興味深いことです。脳の深い部分は大脳辺縁系(旧脳)と呼ばれ、感情的な処理を行い、前頭葉頭頂葉(新脳)は理性的な処理を行うそうです。池田氏は「自制とは、理性脳が感情脳をどのように処理するかという問題で、理性脳が勝てば問題無いのですが、実際には理性脳は疲れやすく自制心は限られていますのでバランスが重要です」と話されました。



4.自制力を決めるもの


 「年の功」という言葉がありますが、経験値が上がっていくと男女共に自制力が上がっていき、また、男女では、女性の方がどの年齢でも自制力が高いと説明されました。

 脳機能には個体差がありますが、マシュマロを待てなかった子どもは大脳辺縁系の働きが前頭葉の働きに比較して活発であり、現在バイアスの強い人も同じだそうです。自制力はストレスとも関係があり、ストレスが高じると自制できなくなるという結果が出ているそうです。

 また、子ども時代に逆境や貧困家庭で育った場合は、喫煙・不健康・経済的困窮の確率が高く学歴が低いなどがあり、大人になってからのセルフコントロールに大きな影響を与えます。脳にも影響を与えることが知られていて、非常に深刻だそうです。米黒人の青少年における調査で、貧しくても頑張れば「レジリアンス高、うつ・攻撃性小、物質依存少」になることができますが、しかし、セルフコントロールが高い人ほど疾病率が高い、生体の加齢速度が高いという結果が出ているそうです。貧困家庭に育った人は頑張れば社会的な階層を上げることができますが、自制能力が高い程早く歳をとり、貧困・逆境では自制は命を削る部分があります、と池田氏

 自制は辛いものですが、人によっては必ずしも辛くない、それは「自制のベースライン」があるからで、「ここまでは当たり前」というベースラインまでの頑張りではあまり消耗しませんが、ベースライン以上の頑張りでは消耗が早いということですので、ベースラインをいかに上げていくかということが課題です。

 自制のベースラインを決める物には、下記のような項目があると説明していただきました。




 ・過去の習慣

 ・将来目標からの内発的動機付け

 ・家族や友人からの影響

 ・文化・社会規範、計画への織り込み

 ・マインド・セット(信念・心の持ち方)



 マインドセットには2種類あり、才能とは固定的なものであると信じる人たちと、才能とは努力によって向上するものと考える人たちに分かれるそうです。池田氏は参加者全員に挙手によって仕分けられましたが、圧倒的に努力マインドセット型の人が多かったことは智の木協会構成員の特徴ではないかとおっしゃいました。



5.自制のスキル

 先天的な部分もありますが、スキルもあります、と池田氏はヒントを説明されました。

  • ヒント1:自分に自制心が無いことを自覚すること、自分を知ることが大事。「真剣に勝負すると負けるかも知れないので、自分をごまかす」(セルフ・スクラッピング)タイプの人は要注意だとか。
  • ヒント2:誘惑(マシュマロ)を見る技術→子どもは、マシュマロが目の前に無ければ待てる、待っている間に気をそらせることをやらせる、絵本を読ませる、歌を歌わせる、マシュマロを客観視できるようにする(成分、色など)。何もしなくても自分で気をそらせることができる子どももいるし、あとから習得することもできる。
  • 機会費用をはっきりさせると、目先のことに捕らわれず、1か月後に得をする方を選ぶようになる。
  • ヒント3:自制のベースラインを高める→意志力や才能について「努力マインドセット」を育てる教育が大事。家庭教育が絡んでおり、厳しい要求をしても協力を惜しまない教育(支援的)をすると努力マインドセットが育つ。
  • ヒント4:意志力を鍛える→自制心や根気がいることを続けることによって鍛えられる。意志力を鍛錬すると、食習慣、生活、仕事全てで自制力がアップする。
  • ヒント5:苦痛の経験→克服できる苦痛と克服できない苦痛がある。克服できる苦痛を与えて、自己高揚感を味わえるように学習させることが大事。



質疑応答


 講演終了後、「自制」とは大変興味深い事柄で、たくさんの質問が出されましたが、その中から特に参加者の関心のある質問について記します。



Q:大阪にIRを作り、カジノを作る計画があります。ギャンブルで身を崩す人がたくさんいるので、ある程度の制限は仕方ないと思う部分と、自制心は個人の問題なので、と思う部分がありますが、このことについて・・・

A:経済は自由主義的な考え方が底流にあり、我々が何をしようと自由です。それが担保されているのが自由主義です。自由選択の余地を残しながら人々の選択の質を高めていこうという公共政策の考え方が大勢を占めています。カジノへ行くのは勝手、知らず知らずのうちにカジノへ行く回数がうまく制約されていくような、そのようなカジノを作ろうということがあります。身を滅ぼしそうな人程カジノへ行かなくなるようなやり方・作り方があります。人々の選択肢を制約することなく、人々の行動の質を高めていくことができます。

Q:進化するにつれて前頭葉が発達し、自制心が生まれるのではないかと思いますが、いかがでしょうか?動物は自制心があるのか無いのか、生きるためにそのような行動をとるのか、一番おいしいものから、栄養価の高いものから食べますね。前頭葉との関係は?

A:猿でリサーチした例があります。虫を食べる猿と草を食べる猿がいますが、虫を食べる猿は「待てない」のです。なぜなら、虫は食べないと逃げてしまうから。報酬(餌)の形と我々の進化の関係から、前頭葉が発達してきています。






お土産
 今回は、(株)上蓮製麺様の「Caroday」4種類(ホウレンソウ、ニンジン、トマト、カボチャ)のうち2種類をお土産にお持ち帰りいただきました。

 代表取締役社長の山田繁雄氏(智の木協会企業会員 高野化成工業株会社)より、「Caroday」について、説明していただきました。


















閉会のご挨拶:株式会社 マイティ 代表取締役会長 鈴木 雅也 氏

 「この協会は、シンポジウムのような少し固い企画もあれば“みどりのサンタフェスタ”のような楽しいイベントもあり、小林先生の企画は我々ビジネスマン以上の企画力とスタッフの方々の努力がすばらしいな、と感じています」とお話くださいました。

 また、「20周年を目指して進化していくためには、我々会員・企業がもっともっとイベントに参加して協力していくことが大事だと思います」と参加者の方々にお願いされました。