智の木協会活動報告

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第5回 智の木協会ワークショップ レポート

第5回 智の木協会ワークショップ レポート
 平成23年11月8日(火) 17:30〜20:00
 於:梅田富国生命ビル 4階 テラプロジェクト Aゾーン

                 司会:智の木協会 事務主幹 川上 茂樹氏


開会のご挨拶:智の木協会 顧問 山本 幹男氏
 当日参加されました方々へお礼を述べられ、智の木協会が平成20年5月4日に設立され、それ以降、シンポジウム、ワークショップ開催を重ね、今回で8回目を迎えたこと、また、その都度、大変盛況であること、これは皆様のご協力とご支援の賜物であることへの謝辞を追加されました。

 この間の経済問題、リーマンショックギリシャを始めとする経済危機などについて触れられ、東北大震災で亡くなられたり行方不明になられた方々に哀悼の意を表されると共に「早い復興を心よりお祈り申し上げます」とご挨拶されました。

 被災地で混乱の最中、お互いに助け合い、冷静さを失わない秩序を重んじる日本人の姿勢について、「外国メディアも日本人の品格を讃え、賞賛と激励のエールを送っている」とのマスメディア評価に誇りを感じ、個人々々が日々努力していくことの重要性を強調されました。
 震災後、保険会社として被災地での安否確認作業を進めるに当たり、津波原発などで困難なこともあった中で、「常日頃、その地に生活している職員がface to face で営業させていただいた努力が、今回、高いパーセントの安否確認につながり、保険金の支払いをスムースに進めることができました」がこれらを通じて学ばせて頂きましたことは、地域のつながり、人と人とのつながり、地域コミュニティの大切さであったとの新たな認識についても語られました。
「大阪富国生命ビルも、梅田の地で地元の皆様のコミュニティに少しでもお役に立てれば」と梅田中心部でのビルの存在意義を智の木協会の活動を通じて明示できたことへの感謝を述べられました。
 また、4階のスペースは、植物と食品をテーマに智の木協会代表幹事小林先生が中心になり、産学連携施設としていろいろな活動をしながら様々な情報を発信していますが、今後とも、智の木協会および「社団」テラプロジクト(産学連携施設)を多くの方々にご活用頂き、社会貢献情報の発信基地としてその存在を高めたい由、協力頂きたい旨の依頼を述べられ、開会の辞を締めくくられました。


事務局報告:智の木協会 事務局長 小菅 喜昭氏
 幹事会が開催され、2010年10月から2011年9月末までの決算と、2011年10月から2012年9月までの2012年の予算が承認されたこと、会員の増減については、企業賛助会員、個人会員共に順調に増加している旨の報告がありました。

 活動としては、今年度は、1回のシンポジウムと2回のワークショップを開催、また、信州バラクラツアーと中国杜仲の森訪問の2回のツアーを実施したことを報告されました。
 今後の活動について、11月より月1回の割合で「智の木イーヴニングトーク」と題して、会員相互の交流を深めるイベントを開催することになったこと、自主事業としては、中学生に理科の出前授業を行うことを話されました。
今後、他の機関と連携協定を結ぶなどして、お互いに協力しながら活動を進めていくことも確認されました。
 
講演1:立命館大学 政策科学部 教授
    仲上 健一氏「中国崇明島と水土の知」

座長:智の木協会 副理事長 小林 昭雄氏

 「いつも中国に行きますと言う言葉に“日本と中国、私共は環境という同じ乗物に乗っています”というのがありますが、環境は一国の問題に限っていないことを悟るべきだと強調してきます。仲上先生とは6年くらい前からサステイナビリティサイエンス機構でご一緒させて頂きました。本学問は、文部科学省科学振興調整費をベースに大型プロジェクトとして進められ、持続可能な社会つくりに関する課題を一緒に勉強させて頂きました。」「数々の公的な役職でご活躍の仲上先生に、昨今の中国の現状も踏まえて興味深いお話を伺えるものと楽しみにしております」と結ばれ、仲上先生を紹介されました。


講演 
 智の木協会々員で、樹花をカリンに決めておられる仲上氏。現在、政策系、経済系、環境系の学会が中心になって進めている震災対応プロジェクト呼びかけ人の代表もされています。
 仲上氏の研究領域は、工学(土木工学・環境工学)、環境経済・政策学、政策科学、アジア太平洋学、サステイナビリティ学と多岐に亘っています。
 土木のご出身ですが、水資源から環境政策そしてサステイナビリティと幅広く、2000年、大分県にアジア太平洋大学ができる際にはそれを作る責任者になられて、世の中にない学問はアジア太平洋学であるとしてその設置を進められたそうです。小林代表幹事が中国黄土高原で進めている「杜仲プロジェクト」も、アジア太平洋学にとっては非常に重要な課題だと思っていますと話されました。サステイナビリティ学については、1713年ドイツで森林保全の本が出版されていて、300年の歴史がありますと紹介され、智の木協会とサステイナビリティ学とは共通点が多くあるのではないかと述べられました。
 ご自身は中国のお生まれとか。中国の事情に大変お詳しく「中国はオリンピック、上海万博で成功して日の出の勢い、世界は中国のものだと言いながら、内部では反省も少し起こっています。しかし、表面上は強気で負けることができないという雰囲気です」と最近の中国の様子を話してくださいました。

 これまでの中国は、経済的社会発展に重心をおき、取り壊しては新しく開発し建築物を造ってきました。しかし崇明島については、これまでの中国では見られなかった生態系、風土を重んじる開発がなされようとしていることなどをご紹介いただきました。


崇明島について
 中国の人は中国で一番大きい島は台湾、2番目はハイナン島と言うそうです。崇明島は長江の肥沃な土砂が河口に堆積してできた中洲の3つの沖積島から構成されており、中国では3番目に大きい島だそうです。世界最大の沖積島で、上海市の1/6を占める崇明島は、西暦618〜20年頃から地上に姿を現し、現在も砂の堆積を続けているとのこと。標高3〜4メートルの平坦な地形で年間平均気温15.2度と温暖。上海の「食糧基地」として位置づけられてもおり、島民は総じて長生きで高齢者が多いそうです。
 東岸に広大な湿地を有しており、野鳥の飛来地であったため、2002年にラムサール条約に登録後自然保護対象地に指定され、その規模や自然の豊富さは世界的に注目されているところから、仲上氏は崇明島の未来を「水土の知」という視点で考察されました。
 上海万博に参加した一人として、崇明島が上海市の中に存在することすら知らなかったことを恥じ、訪問はできなくてもガイドに現状を聞き、感想を聞くことは可能だったのではと悔やまれます。


崇明生態島建設綱要の発表
 上海市が2010年1月に発表。低炭素コミュニティを建設すること、低炭素農業を発展させること、新しい観光発展モデルを探求することの3つの大きな特徴を掲げたそうです。
 崇明生態島建設の特徴は、生態環境の各種指標を重視し、同時に、経済・社会の指標にも配慮して経済社会発展計画のバッファも残しているものだそうですが、これまでの中国では、生態環境重視の計画は後回しにされていましたので、この転換には目を見張ります。
 ラムサール条約登録後2005年頃から開発・保全・投資という三つの要素がすれ違いながらも各国の注目を集めてきたエリアで、2005年には「中国・フランス崇明生態島プロジェクト協議」が発足し、2008年には当時の英国のブラウン首相が崇明島を訪問、環境対応モデル都市「生態城(eco-city)」の開発を官民で推進することを宣言したそうです。
 一方で、「大上海城市発展計画」もあり、一定の開発が避けられない状況にあるそうですが、崇明島は生態系とのバランスを保持した開発が必須要件で、特に、自然生態系資源をベースにして「循環型」の生態島に必要な理論的ベース、さらにはそれを実現化するための具体的な構想が求められているとのことです。
 この「綱要」には諸外国との連携に関する記述が不明確で、崇明島々民はむしろ経済的発展を望んでいるという調査結果も出ているそうです。

崇明島における問題点
 塩害と化学肥料利用による地質低下が農業発展の問題点として上げられており、崇明島でとれる自然資源を使った循環型の土壌改良が求められているそうです。
 「自然生態系」と「地域の経済水準の向上」という相反する目標を両立させながら、日中の協働プロジェクトを展開するという困難な課題へ挑戦していくお話がありました。「低炭素都市構築で日本は後れをとっていましたが、自然生態系へのアプローチを第一義的におく崇明島では、欧米に先んじることが可能」と仲上氏は明言されました。
 「組織」を使用することによって困難を除去しながら協働を進めていくことが迫られており、水資源をめぐる「相互牽制」や維持・管理のための「水土の知」、近代の開発型発想からの脱却がポイントであると結ばれました。


「水土の知」について
 最後に仲上氏はタイトルである「水土の知」について、以下の7つのポイントにまとめてくださいました。
① 見極めること。崇明島の総合計画が水・緑・土といった全ての自然資源を活用できるポテンシャルをもつかどうか?自然資源の活用の成否の点から見ること。
② 使い尽くすこと。地域の資源として、水資源・湿地帯・農作物を使い尽くす。「使い尽くす」という様式の実現と理想の比較検討(地域の水と土を本当に使い切っているのか?)
③ 見定めること。現実に開発されている要素の評価。ダム湖の評価・検討を行う。
④ 大事にすること。エコヴィレッジを構成する要素を検討。
⑤ 見試すこと。湿地帯の維持・管理問題。
⑥ 見通すこと。上海市との関係。
⑦ 仲良くすること。農村地域における予期される問題。水と土が基本だから、そのネットワークをしっかり押さえる。


新しい開発に挑む中国に期待
 崇明島々民が長生きであるということは、環境が良い、食糧事情が良いなどの事柄が考えられ、政府は生態系を考慮し、その土地の風土を重んじた開発を念頭におくことを心掛けるようになったようで、これまでの中国情報からは想像できないような方向転換と捉えることができます。鉄とコンクリートから少しずつ脱却、自然と向き合った発展を目指す気運が崇明島から伺え、今後の中国が進む道として大いに歓迎されます。仲上氏に最新の中国の一面をお話いただきましたので、これをベースに今後、非常に情報発信の少ない国ですが、情報に耳を傾け、崇明島の開発状況を見守っていきたいと思います。



講演2:盆栽研究家 川崎 仁美氏

座長:智の木協会 理事 大塩 裕陸氏
 盆栽研究家、川崎仁美氏について次のようにご紹介されました。「京都市生まれで高校3年生の時に盆栽雑誌のモデルをされ、盆栽の世界に入られたそうで、2002年から現代盆栽を主宰し、お若いながら大活躍しておられます。国内外で盆栽の解説や日本盆栽大観展の企画・広報もなさっています。また現在は、京都工業繊維大学大学院で美学・日本美術史を学びながら盆栽の研究をしておられます。」

 「日本の伝統文化である盆栽の素晴らしさをご紹介いただけるのではないかと期待しています」と結ばれました。


講演
 川崎氏は18歳の時に盆栽協会に入会されることになり、盆栽を作るところからスタートされました。しかし、盆栽については歴史的な資料がまとまっておらず、大部分を独学で勉強され、その後、盆栽の仕事をしたいとの思いから、また、今生きている盆栽をしっかり考えるという意味で、2002年現代盆栽を立ち上げて活動を始められたそうです。


盆栽の歴史
 盆栽のルーツが中国であろうことは容易に想像できますが、川崎氏より「唐代に盆景が発生し、平安時代に日本へ伝わってきました。盆景が発生した背景は、道教に関係があると言われています。根底に神仙思想があり、仙郷をイメージさせるために生まれたのが山水画、三次元の立体として生まれたのが庭園、それをコンパクトにしたものが盆景であったと言われています」と説明していただきました。
 平安時代に盆景と共に禅宗も一緒に入ってきたので、日本では主に禅僧が盆栽をたしなんでいたそうです。鎌倉時代では中国の盆景を写すような形だったものが、江戸時代になると現在の盆栽に近い形になったようですが、盆栽と鉢植えの区別がなされていない状態で楽しまれていたとか。明治になりますと芸術の概念が日本に入って来て、盆栽も日頃のたしなみから芸術に格上げすることが必要になってきたそうです。


盆栽の世界、伝承盆栽
 「アマチュアとして盆栽をとらえる際には趣味の盆栽の認識で、プロの場合は伝統盆栽と呼び、趣味の盆栽とは一線を画します。この世界には盆栽職人という職業があり、鉢や道具を扱う業者が存在します」というお話を聞き、盆栽の奥深さ・格調の高さをじわじわと感じてきました。樹齢百年を超すような木は、管理が難しいので盆栽職人に預けて管理してもらい伝承していくという世界なのだそうです。


盆栽のオーナー制
 伝承盆栽のオーナー制、聞きなれない言葉ですが、競馬のオーナー制と同じと聞き皆納得です。盆栽を購入したオーナーが盆栽職人に預け、管理された盆栽が日本盆栽大観展のような展覧会にオーナーの名前で出品され、そこで賞をとることによって格調を上げていき、オーナーが亡くなった場合はオークションにかけられ、甲斐性のある方がその木を購入して伝承していくような世界だそうです。盆栽は30〜50年周期でバトンタッチされて伝承されており、まさに“生きる骨董品”です。


盆栽の形(かた)
 盆栽の形(かた)について説明していただきました。盆栽の形は樹種、樹形、サイズの三つに分類され、樹種は大きく分けて松柏(松、真柏、杜松、一位、杉など)と雑木(もみじ、けやき、ぶな、梅、桜、皐月、花梨、柿などの広葉樹のこと)の二つに分けられます。松柏盆栽の代表的なものは、真柏と松(黒松、赤松、五葉松、蝦夷松、錦松)です。

 盆栽は「古ければ古い程良い」という骨董的価値観があり、松と真柏に関しては、管理が良ければ千年以上生きることが可能で、松が喜ばれ盆栽と言えば“松”と言われる所以でしょう。
 雑木盆栽は葉物、花物、実物の三つに分類され、葉物には、もみじ、けやき、ぶな等が含まれるそうです。もみじは季節によって変化を、けやきは樹形や枝振りを楽しむという鑑賞の仕方を教わりました。花物には、皐月や盆梅が含まれ、皐月は品種改良が進んでおり、開花した時に薬玉のように華やかになり、人気があるそうです。梅は古さを表現しやすい木であり、寒い時期に華やかな花が咲き、しかも香りもよいところから骨董的価値観につながり人気があるとか。実物には花梨や柿が含まれ、「見た目にも色としてきれいです。鉢の中の栄養分しかないにも関わらず、かなりしっかりした実が生り、これは職人の肥料の配合の技によるところ大です」と川崎氏。
 樹形は主に、模様木、懸崖、直幹、根上がり、文人、吹き流し、石付、株立ち、寄せ植え、斜幹、双幹、箒立ちに分類されていますが、木に負担がかからない形にすればよいと教えていただきました。
 サイズは、大物盆栽(60cm以上)、中品盆栽(25〜60cm位まで)、小品盆栽(25cm位まで)、ミニ盆栽(7.1〜10cm位まで)、豆盆栽(7cm以下)に分類され、日本盆栽大観展は大物盆栽展だそうです。昔は大物や中品盆栽に人気があったようですが、最近は小品やミニ盆栽に人気があり、それは住宅事情、また、女性の愛好家が増えたことなどに因るのではと川崎氏は分析されました。


世界のBONSAI
 海外でも盆栽が流行していて、2004年ドイツ、ミュンヘンの盆栽展の例をご紹介
いただきました。現在では、大文字のBONSAIが世界共通用語になっているそうです。
 出品者はヨーロッパ全土から集まり、日本の展示方法を手本に開かれていたこの展示会、日本では盆栽と骨董を合わせるやり方が主流ですが、絵画と組み合わせたりする例があったこと、また、盆栽をアートと捉えてオブジェのような盆栽が多かったと話されました。初期の段階では、日本の盆栽を輸入して育てていたヨーロッパの人達も、気候の違いなどから今では現地で“山どり”の植物を盆栽に仕立てて楽しんでいるそうです。造形的な盆栽は長生きできないということに、最近、ヨーロッパの愛好家達も気づき始めているそうです。


鉢植えから盆栽へ(鉢植え→剪定→針金かけ→鉢合わせ→盆栽)
 「鉢植えと盆栽の区別がつかない人が多い」と聞き、耳が痛い一人です。ここでは、鉢植えから盆栽に仕立てていくプロセスをご紹介いただきました。
 「鉢植えとは、大きくなることを楽しむもので、それを盆栽に仕立てていく際の第1段階の技術として剪定があり、太い枝を切るところから始めます」というお話がありました。これは勇気のいる作業です。太い枝は栄養を独り占めしており、それをとることによって他の枝に万遍なく栄養が行き渡り、寿命が変わるとか。鉢植えと盆栽の大きな違いは寿命だそうです。「盆栽では百年以上の木が多くあり、二百年、三百年のものもありますが、鉢植えで百年以上の物はなかなか無いと思います」とのお話にうなずきました。これからは思い切って剪定できると思います。
 第2段階の針金かけについて、「植物の虐待だという人がいますがそれは誤解です。人間の歯列矯正のようなものです。光合成しやすいように、上から見た時に枝と枝が被らないように仕立てていきます。長生きさせることが盆栽の一番の目的で、針金かけは健康美を目指しています」との説明に、合理的だと感心しました。
 鉢合わせについて。伝統盆栽で百年以上経つ古木の場合は格調を合わせるために骨董品と合わせることが多く、また、盆栽は小さければ小さい程よいという価値観があり、鉢合わせすることにより木を大きく見せたいという意図があるそうです。小さい盆栽の方が価値があるその理由は、生き物は一度大きくしてしまうと小さく戻せないため、樹齢の割に小さいということは、職人やオーナーが時間と手間をかけてきた証明だからだそうです。「小さいけれども巨木に見せるテクニック、そこが鉢植えとの大きな違いです」と川崎氏は力説されました。


最終段階
 鑑賞の仕方について「飾台の上に乗せます。根元には苔を張ります。これは“化粧苔”とも言いますが、古木になると地味な色になりますので苔を張ることにより鮮やかな緑でコントラストが生まれます。また、鑑賞する際に室内に入れますので、保湿の役割もします」とのこと。
 川崎氏は若い人たち、育てられない人たちと盆栽の距離を縮める方法として“鑑賞する楽しみ”を提唱しておられます。「鑑賞する楽しみを覚えてもらい、将来時間と余裕ができた時に趣味を選ぶチャンネルの一つに盆栽があると思ってもらえれば。盆栽愛好家の種まきと考えて、大観展の中でも鑑賞ツアーを設けて盆栽の見どころを紹介する活動もしています」と続けられ、さすが若い盆栽研究家の新しい試みとお見受けしました。

盆栽鑑賞のススメ・・・見るポイント
 ・根ばり・・・古さは根元で見ます。
 ・枝配り・・・枝と枝との間の空間、枝と枝が人の字になって開いている、これは盆栽特有のフォームです。足元から幹にかけての古木感が大事で、意図的にその部分が空いています。そこを見せるために正面があります。
・コケ(木毛)順・・・木毛とは枝先のこと
  巨木に見せなければならないので、枝先が毛のように細くなっていることが重要です。品種改良が進んでいますので自然の木には無いような枝先が細かくなっているのが特徴です。
 「正面に立って見上げて鑑賞することがマナーになっていますので、触ってはいけませんが、太くて大きいところから細くなっているところまで目を近づけて下から順に見上げてください。小さいからといって見下ろすのではなく、人間が下から見上げると盆栽が巨木に見える瞬間があります。これは遠近感を使っています。プロの技の見せどころになっています」と詳しく説明していただきました。
 この方法で鑑賞しますと、全ての人が盆栽を巨木として認識できるはずです。そして、その木が展示されるまでに多くの職人の方々の手を経て育ってきており、しかも人間よりも遥かに長く生きていることに畏敬の念を抱くことになるでしょう。
 参加者のだれよりもお若い川崎氏に、和服姿で伝統盆栽について分かりやすく解説していただきました。「職人の世界」での異色の存在、「華」とお見受けします。本日より盆栽ファンが増えたのではないかと思います。


会場のご質問に対して
Q:皐月について、カラフルな花が咲いていましたが。
A:品種改良で接ぎ木で1本に仕立てています。企業秘密のところがあり、成功した方から購入する形になっています。
Q:値段について。
A:バブルの頃には1鉢1億円というような値段がついていたようですが、値段は経済と共に変動します。小品で1鉢1万円くらいではないでしょうか。管理費については、職人とオーナーさんの信頼関係で決められるのではないでしょうか。
Q:外国の場合について。
A:アートとしての認識がありますので、自らの手で創作することを優先しています。職人に預けることはあまりしません。
Q:盆栽の輸入について。
A:日本の職人が素材として購入することはありますが、外国の作品を購入することはありません。
Q:床の間飾りの場合、光の扱い方は?
A:展示会では飾りっぱなしですが、通常、一日中家の中で飾っているというわけではなく、鑑賞が終わると外へ出します。来客の時に迎え花の感覚で飾り、帰られるとまた庭に返す、夜は大抵の場合は外へ出します。


閉会のご挨拶:智の木協会 理事 吉田 茂男氏

 「崇明島という大きな島の話と1㎡以下の小さなエリアの話を、どのように受け止めて最後にまとめればよいのか非常に困りましたが、興味深い、今まで聞くことのなかった内容で新鮮な驚きを感じました」と述べられ、参加者もうなずいておられました。
 智の木協会のシンポジウム、ワークショップではこれまで領域が重なることなく選択されており、小林代表幹事のセンスの良さに感心しますと感想を述べられました。
 そして、今後もこの会が盛会になりますよう、皆様の活発なご参加をお願いしますと結ばれました。